長さ24.3㎝×重さ218.9g
棒身に黒漆が塗られ、握柄部分に古代錦をおいて、その上からやや太めの紐を巻いて滑り止めにしています。中央には紐付けの穴が開けられ、手貫紐が付けられています。また、先端部が山型にとられ、左右に金蒔絵で日月が描かれるなど非常に高貴な雰囲気の小型武器(写真3枚目)です。握柄の存在から名称を「なえし」としましたが、「手の内」兼用かも知れません。
手の内は、懐や手の中に隠しておいて、左右にはみ出した先端部分で顔面や急所に当身をくれる隠し武器です。
江戸の十手(井出正信著 里文出版 №112)では、「芸術的嗜好の高い細工であり、十手術の免許皆伝者への下賜品とか、恩賞物だったと諸説ある」としていますが、手の内やなえしとして使用されたと推考すれば、刀の使用が憚られる城内や御所等において将軍(藩主)・公家等の側近として警固(護衛)の任務に就いた武士が、咄嗟の危機に対応すべく懐等に隠して携行した小型武器であると考えたほうが良いと思います。これらの理由から名称を「御殿なえし」としました。
写真(1枚目・2枚目)でも分かりますが、、握柄の先端近く(小指・薬指の当たる部分)にかなりの擦り切れが認められることから、相当厳しい稽古を積んでいたことが窺われます。