江戸町(南北)奉行所、いわゆる八丁堀の同心が所持していた通称[銀流し]といわれる官給十手です。

 江戸町奉行所の与力・同心の官給十手は、鉄の芯に真鍮板を被せ、これを蝋付けしたもので、棒身にはさらに銀鍍金が施されていました。また、握柄には片切彫りの唐草文が彫られ、その上から金鍍金されていましたが、残念ながら手擦れでほとんどが摩滅しています。

 鈎は丸形で「わりしめ」と呼ばれる棒身の中でかしめる技術が使われています。紐付け鐶は丸形で柄頭付近には朱銅の環が嵌め込まれているのが特徴となっています。

 江戸町奉行所は、南町が数寄屋橋、北町が呉服橋の近くに置かれ、南北奉行(役高3000石)の下にそれぞれ与力25人、同心100人がいました。その中でも江戸御府内の治安維持を任務としたのは、三廻りと呼ばれる定町廻り6人、臨時廻り6人、隠密廻り2人の計12人(南北あわせて24人)でありました。

 

 鍛鉄芯真鍮張銀鍍金先細丸形棒身 真鍮鈎・割しめ

 真鍮唐草文片切彫り握柄・朱銅飾り環 真鍮丸形紐付け鐶・菊座金

 長さ28.9㎝ 重さ332.7g

 

 ※ 2枚目の写真は、唐草文様が刻まれ握柄です。紐付け鐶の近くに朱銅の環が確認

  できます。

   3枚目の写真には刀傷や打ち傷跡が多数見られ、捕物の激しさを窺い知ることが

  できます。