これまでのおはなし
ひきこもりだ。
外に出るのは好きじゃない。
日用品の買い物だって歩き、自転車で動ける範囲ですましたい。
タバコは買いだめるし、必要なものもAmazonなどのネットショップで買えるものならネットショップで済ます。
でも、本屋は好きだ。
本はいい。読んでいる間はストーリーの世界や
他人の人生に没頭できる。
本屋をうろうろするのだけはひきこもりな自分の中で珍しい行為だ。
まあ、気に入った本があっても、家に帰りネットで注文するのだが。
荷物が増えるのは好きじゃない。
借りていたDVDを返しに行くついでに、まずは行き道にある本屋に立ち寄る。
特に目当ての本はない。
適当にぶらつき、気になるタイトルや、書店員のPOPで惹かれたものがあればチェックする。
書店員のPOPも好きだ。
ヴィレッジヴァンガードが有名だが、大手書店ではよくPOPがある。
書店でPOPを書いている方、ちゃんと読んでいるファンがここにいますよ。
いいPOPは「あ、この本もっと読んでみよう」と思わせるものだ。
わるいPOPは、ただのあらすじだ。
忘れないように、スマホのメモに気になった本のタイトルを入力する。
メモしておかないと、わたしはすぐ忘れてしまうからだ。ちょっとマメかもしれない。
よくメモしない人は
「忘れるような情報は自分に必要のない情報だ」
とかいうけれど、
いつ必要になるのか、その人はわかっているのだろうか。
今必要じゃなくても、あとになって大事な情報になるかもしれないじゃないか、
と思っている。
タイトルと作者。スラッシュ「/」で区切って3冊ほど入力した。
慣れたものだ。LINEなんてほとんどしないけど、LINEヘビーユーザー並みに
フリック入力は早いだろう。
(フリック入力のはやさ、いつ役に立つのだろう・・・。)
よし、あとでうちに帰ったらAmazonでレビューでも見よう。
自転車で家に着くと、ポストを開ける。
住宅会社のチラシ数枚と、白い封筒がひとつ。
懐かしい差出人と、覚えのない女性の連名からの手紙だ。
社会人でまだ中年と呼ばれる年齢になっていない人ならわかるだろう。
この封筒がなんであるのか。
大学時代、仲の良かった友人の結婚式。その招待状だ。
今でもつながっている、数少ない友人のひとり。
最近会っていなかったけど、結婚するんだ。
っていうか、おれはあいつの結婚のことも知らなかったんだ。
本当に仲が良かったっていえるのかな。
ひきこもりだとは言ったが、完全なひきこもりじゃない。
中途半端なひきこもりだ。
なんでも中途半端なんだ。プチひきこもり。
だからDVDだって借りに行くし、本屋にだって行く。
どちらもネットで済ますことはできるが、それはイヤだ。好きじゃない。
そして、意外に思われるかもしれないが、
友人の結婚式には招待されたら必ず出席する。
部屋に戻って、返信はがきを書こうと思うと、
右手に見慣れた袋を持ったままだった。
DVD、返すの忘れてた。