これまでのおはなし

第1話 発端

第2話 契機

第3話 契機2

第4話 契機3

 

 

 

 

変われないのは人のせいではない。
自分のせいだ。
しかし、自分が変わるキッカケは他人がもたらす。

 


ナオキの話はわたしにとって衝撃だった。

 

結婚することにも驚いたが、その驚きよりも数段、上だ。
動揺をしていないフリをしつつ、ナオキに質問する。
もちろん、ナオキとは結びつかないナンパの件だ。

 

 

「ナンパってさ、知らない女性に声をかけるやつよね?」

 

「ん、そうだよ。でもウエダが思っているようなチャラいのじゃないかもな」

 

 

雰囲気が変わったとはいえ、ナオキは特別かっこいいわけではない。
しつこいが、本当にふつうだ。背も普通、顔も普通、性格も普通。モブキャラだ。
(ナオキがここを読めばわたしに抗議してくるに違いない)
とてもとても、ナンパをする雰囲気をもつような男ではない。
しかし、目の前にいるナオキは違う。わたしの知るナオキじゃない。

 

 

「チャラくないナンパってあるのかよ」

 

思った疑問を頭で深く考えることなくそのままナオキにぶつける。
普段わたしは頭でいったん考えてから話すタイプだが、友人の前では別だ。

 

 

「いやさ、ウエダはおそらくホストみたいな人がナンパしている人種だと思ってるでしょ?でも現実、そんなことないわけよ」

 

ビールの入ったジョッキの水滴をおしぼりでふきながらナオキは続ける。
注文した料理は、ほとんど残っていない。皿にあるのはつけあわせの野菜だけ。

 

 

「知っているか、知らないかの違いだけだよ。あと、行動するか、しないか」

 

その言葉にひっかかったので、そのまま聞いてみる。

 

「知っているって、ナオキはナンパの何を知っているんだよ?」

 

「ん? えー、あー、うん。」

 

急にナオキの口が止まった。顔は笑っているような照れているような。
気にせずわたしは続ける。
ナオキがここで最初に言った単語がひっかかるからだ。

 

「もしかして、おれから笑われるってこと気にしてる?」

 

「うん、それ。」

 

「そこまで言ったんならさ、言えよ」

 


わたしはこの時のことを今でもありありと覚えている。

 

 

今まで自分が生きてきた世界が、限定的なもので
自分の知らない世界にこそ、求めるものがあるということ。

 

 

否定からはなにも産まれない。
YES、というだけで窮屈な世界から抜け出せる。

 

 

否定の世界に身をおいていると、得られるものは安心感。

 

新しいことをヒトは否定する。
現状維持のため否定する。

 

「わたしはこのままでいいんだ」
ありのままでいい、という言葉を
このままでいい、と誤解する。

 

 

知っていることと、知ったことを行動に移すことの間には
とてつもなく大きな溝がある。

 

 


ナオキから衝撃の告白がはじまる。

 

「カンニングしたんだよね、おれ」