日刊ゲンダイDigitalが、文科省は「博士」増加対策へ 高学歴ワーキングプアはそれで本当に解消できるのか?という記事を掲載しています。

 

博士課程進学者が減っているのは、博士課程まで進学するのは将来設計において、かえってハイリスクになることが広く知られるようになったからとしています。

 

具体的には下記の通りですが、どれも納得できる理由です。

 

①経済的に自立したい66.2%

②社会に出て仕事がしたい59.9%

③博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない38.4%

④博士課程に進学すると修了後の就職が心配である31.1%

⑤博士課程の進学のコストに対し生涯賃金などのパフォーマンスが悪い30.4%

⑥大学教員などの仕事に魅力が感じられない27.0%

 

記事にはありませんが、日本が貧しくなり、経済的な余裕がなくなっていることも原因でしょう。

 

文科省は、2040年に人口100万人当たりの博士号取得者数を2020年度の約3倍にする目標を提示したそうですが、記事では難しいとしています。

 

国に余裕がなくなっているのですから、むしろ高専卒など、若くして社会に出るルートを推奨したほうが良いのかもしれません。経済力が落ちており、目指すのは働き方改革ではなく、労働時間を増やすことが適切と思います。

 

また、文科系の場合、修士課程に行く人すら少ないのですから、まずは社会人の学び直し等で修士課程の学生を増やすことが先と感じます。

 

博士課程は、当初から学者になると決めている方の他、社会に出てから研究課題の解決が必要になった方が進学すれば良いのではないでしょうか。

そして、博士課程で査読付き論文を書く教育ばかりしていても、社会で役立つスキルはあまり付かないでしょうから、カリキュラムの見直しも必要です。

 

文科省は省庁の中で序列が低いなどと言われます。あまり現実的ではない政策を提示しているところを見ると、やはりそうなのかなと思わざるを得ません。

 

 今、文部科学省の「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」計画では、いろいろな方策を尽くして大学院の博士課程後期(博士)を増やそうと躍起になっている。

 日本の博士は、人口100万人当たり123人で漸減傾向にある。英国(100万人当たり340人)やドイツ(同338人)はもとより、急増する韓国(同317人)や米国(同285人)と比べても圧倒的に少ない。日本では、博士課程入学者が2003年には18232人もいたのに、20年後の2023年は15014人にまで減っている。

 その入学者の内訳をみると、社会人が3952人から6237人と63%も増加し、留学生も2643人から3217人と22%と伸び、最近は中国人留学生が増えている。ところが、社会人や留学生を除く博士課程入学者は、同期間で11637人から5560人へ52%の半減となっている。学部卒で大学院修士課程(博士前期課程)を修了後に、博士課程(博士後期課程)に進学する大学院の学生が減っているのだ。

 半減の主な理由を探ってみると、以前は大学院進学がモラトリアム(猶予期間)として選択される傾向があったが、その博士課程まで進学するのは将来設計において、かえってハイリスクになることが広く知られるようになったからと思われる。高学歴ワーキングプアという言葉も話題になった。

 

 上記プランの文部科学省調査では、修士から博士課程に進学しない理由として、①経済的に自立したい66.2%、②社会に出て仕事がしたい59.9%、③博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない38.4%、④博士課程に進学すると修了後の就職が心配である31.1%、⑤博士課程の進学のコストに対し生涯賃金などのパフォーマンスが悪い30.4%、⑥大学教員などの仕事に魅力が感じられない27.0%などとなっている。複数回答であるが、全体として将来への経済的不安が強いことがよくわかる。コスパが悪いのだ。

 

 このような状況が好転することが、博士課程志望者の増加につながる第1条件であろう。文部科学省の「博士人材活躍プラン」では、2040年に人口100万人当たりの博士号取得者数を2020年度の約3倍にする目標を提示している。

 それは可能だろうか。はっきりいって難しいのではないかーー。

 第1に、博士の希望職種としてあげられる大学教員がこれから増えそうにないからだ。18歳人口の減少で今や私立大学の半数が定員割れという状況で、私立大学の多くは正規の大学教員を増やせる経営事情にない。国立大学も運営費交付金の伸び悩みで、経済的余裕はないという声が出ている。教員採用は任期付きのポスドク(博士研究員)がせいぜいであろう。博士の主な受け入れ先であった大学教員の正規のポストはますます減少していくだろう。


 第2に、博士のメインの就職先であった大学など研究職の職場環境の問題もある。大学や研究機関における不当な権力や無視などアカハラ(アカデミックハラスメント)の実態が広く知られるようになった。働き方改革がよる改善も、民間企業より進んでいないという指摘もある。博士の就職先である主な大学や研究所などが働きやすい魅力ある職場になる展望もあまりないようだ。

 

 第3に、今でも有名大学の工学系学部卒業生のかなりが大学院修士課程(博士前期)に進学している。民間大手企業でも技術の高度化が進み、工学修士が技術者のメインルートになりつつある。しかし、博士課程(博士後期)への進学率は工学系が意外と低い。博士では研究テーマの専門性が強まりすぎて、メーカーなどへの就職を考えればむしろ修士修了レベルが現実的という声もある。