プレジデントオンラインに、なぜディズニーはミッキーの著作権を延長しなかったのかという記事が掲載されています。

 

理由としては、以下が挙げられています。

・偽物を買う観光客は正規販売店の売り上げを奪いはせず、むしろ若い消費者たちに、最高にクールなブランドはこれよ、と教えている。

・高級ブランドの偽物を買った人の40%は、フェイクに飽き足らずにいずれ本物を買うため、将来本物を買う潜在顧客との橋渡しをしている。

・偽物を容認することによって多くの高級ブランドの本物の価値は一段と高まる。

・ファンを訴えるのは愚かな行為。

 

偽物を買う客は正規の売り上げを奪わないというのは、知財の損害論で良く知られた話と思います。

ですが、偽物を買う客が最高にクールなブランドと教えている、いずれ本物を買う、偽物の容認で本物の価値が高まるなどは、新たな考察という気がします。

 

Youtubeでも、違法にアップロードされた映画やアニメ、音楽コンテンツ等が溢れていますが、上記のような考えで放置しているのかもしれません。

例えば、現在はスターウォーズもディズニーの作品ですが、かつてのディズニーとは異なり、厳しい取り締まりがされてないようにも見えます。

 

2024年から、初代ミッキーマウスの著作権が切れ、誰でも自由に利用できるようになった。なぜディズニーは延長を申請しなかったのか。コロンビア大学のマイケル・ヘラー教授とカリフォルニア大学のジェームズ・ザルツマン教授は「高級ブランドがいかがわしい偽物を一掃しないのと同じだ。ディズニーは法的保護がさほど重要ではないことに気付いたのだろう」という――。

 

高級ブランドが偽物を一掃しないワケ

驚いたことに、盗みの容認は高級ブランドにも恩恵をもたらす。イヴ・サンローランはハンドバッグにあの有名なロゴをプリントしている。ロレックスのすべての時計にはあの王冠マークが刻まれている。だが商標を躍起になって守ろうとするのがつねに賢明な戦略であるとは言えない。

サンローランやロレックスの偽物をタイムズスクエアのいかがわしい売り手から買う観光客は、正規販売店の売り上げを奪いはしない。むしろ彼らは若い消費者たちに、最高にクールなブランドはこれよ、と教えているのだ。そう考えれば、偽物はただでできる最高の宣伝である。

高級ブランドの偽物を買う人たちは、将来本物を買う潜在顧客との橋渡しをしていると言えるかもしれない。ある調査によると、高級ブランドの偽物を買った人の40%は、フェイクに飽き足らずにいずれ本物を買うという。別の調査によれば、偽物を容認することによって多くの高級ブランドの本物の価値は一段と高まるという。

 

「ファンを訴えるのは愚かな行為」

「誰にでも大儲けをすることを容認するとは思えないが、ファンとの関わりが重要な役割を果たすことはディズニーも理解し始めたようだ」と知的財産権を専門とするある教授はディズニーの新しいアプローチについて語っている。「レコード業界が気づき始めたとおり、ファンを訴えるのは愚かな行為だ。ファンだからこそ盗むのだから」

現在の経済ではさまざまな領域で「他人の蒔いた種を収穫する」ことが現実のルールになっているが、それでもイノベーションは次々に生まれている。誰も所有権を主張できないケースでさえ、人々は創造的労働にやり甲斐を認めているのだ。コピーも共有も盗みの容認も、成長の原動力となりうる。

問うべきは、「著作権の保護をファッションにも与えるべきか?」ではない。ファッション業界を指針とするなら、「知的労働に対する法的所有権を排除できる領域はほかにないか?」を問うべきである。