産経新聞が、シャインマスカットの「悪夢」もうごめん 「かんきつ王国」が米国で仕掛ける品種ビジネスという記事を掲載しています。

 

愛媛県が「紅まどんな」などの高級品種を開発する過程で誕生した未登録品種を、米国で商業栽培する「品種ビジネス」に着手する、現地パートナー企業が生産・流通を担い、県は現地取得した特許のロイヤルティー収入を企業側から得る仕組みとのことです。

 

「シャインマスカット」は、国の研究機関が33年にも及ぶ研究の末、平成15年に品種登録したがその直後に海外に流出し、中国産や韓国産のシャインマスカットはタイやベトナムなど東南アジアで流通した結果、許諾権料の損失だけで年間100億円にものぼるそうです。

 

また、かんきつ類の「不知火」は、熊本県で「デコポン」の名で商標登録されたが、平成初期に韓国・済州島に渡って特産品となり、米国では現地企業が「Sumo Citrus」として商標登録、世界各国に流通するようになったとのこと。

 

愛媛県は、このような失敗を繰り返さないための仕組みを作ったという話です。

 

かんきつ類生産量日本一の愛媛県が「紅まどんな」などの高級品種を開発する過程で誕生した未登録品種を米国で商業栽培する「品種ビジネス」に着手する。現地パートナー企業が生産・流通を担い、県は現地取得した特許のロイヤルティー(使用権)収入を企業側から得る仕組みで、今後品種の選定や試験栽培などを進めていく。ブランド農産物をめぐっては、これまで海外流出により国内農業が不利益を被る事例が相次いでおり、中国で産地化が進む「シャインマスカット」では年間損失額100億円という試算も。農林水産省の担当者は「品種保護と海外市場開拓を両立できる先進的な取り組み」と期待を寄せる。

愛媛ブランドで流通し、逆輸入は禁止

県は江戸時代後期から温州ミカンの生産が盛んに行われてきた「かんきつ王国」。品種開発の歴史も古く、昭和初期にはすでに県立機関で研究が行われてきた。平成以降は農家の所得安定と繁忙期の分散化を目的に、収穫時期の異なる品種を数多く生産する「通年出荷」を推進。高付加価値の品種開発にも注力し、平成17年に「紅まどんな」、19年に「甘平」、令和元年に「紅プリンセス」など数多くのブランドかんきつを世に送り出してきた。

今回、米国で生産するのは、こうした長年にわたるブランドかんきつの開発過程で、市場に出すには至らなかった未登録品種から選ぶ。候補は10種以上あるというが、いずれも他品種と収穫時期が競合したり気候条件などが原因で「愛媛以外なら十分生産に値する」(県担当者)という自信作だ。

県は今年度中に穂木(接ぎ木用の枝)を米国に送り、来年度から企業側と共同で栽培試験をスタート。品種の選別などを進め10年後の商業栽培開始を目指す。現地では愛媛ブランドを明記し生果で流通させる見通しで、県内生産者保護のため逆輸入は禁止する。

 

攻撃は最大の防御

県の狙いはそれだけにとどまらない。担当者は「もし不正流出した品種が定着すれば取り返しがつかない。『攻撃は最大の防御』で、いち早く愛媛ブランドを現地で確立する必要がある」と明かす。

念頭にあるのは、国内品種の海外流出という苦い歴史だ。