すし店「久兵衛」が、オークラの建て替えで舗がメインエリアから外されたのは「格落ち」だとして、オークラに損害賠償などを求めた訴訟で、久兵衛の上告を退ける決定がされました。

 

オークラは虎ノ門に近く、弁理士会の賀詞交歓会や弁理士の日記念祝賀会で良く使われるホテルです。

建て替え前は立食パーティーで久兵衛のお寿司が出たので、宴会場内にはいつも列ができていました。

 

この件、場所を決める権限はホテル側にあり、無理筋だったと思います。

久兵衛は二―オータニや帝国ホテル大阪にも入っており、場所が気に入らなければ、別のホテルに入れば良いのにと思いました。

 

しかし、ある弁護士さんによれば、ホテルオークラと久兵衛の間に建て替えを巡って既に2回の裁判手続きがなされており、久兵衛は旧本館から退去して別館で営業を継続すること、ホテルオークラ東京の新本館完成後は久兵衛が新本館に移転する旨の和解が成立していたそうです。

 

そして、その際決まった賃料が売上の20%と高く、高裁でその点を争ったようです。

お店がアーケード街へ移転させられたから訴訟を起こした、という単純な話ではありませんでした。

 

最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は、ホテルオークラ東京(東京都港区)の建て替えに伴って店舗がメインエリアから外されたのは「格落ち」だとして、高級すし店「久兵衛」がホテル側に損害賠償などを求めた訴訟で、久兵衛側の上告を退ける決定をした。16日付。敗訴の1、2審判決が確定した。

 

判決などによると、久兵衛は昭和39年からホテル直営の高級和食店「山里」に隣接するエリアに出店。令和元年開業の新ホテルでは別棟アーケード街への移転を提示され、片隅に追いやられて店の信用が大きく傷ついたとして提訴した。

 

3年の1審東京地裁判決は久兵衛側が主張していた「双方協議の上で店舗の場所を決定すべき義務」をホテル側が負っているとは認められないとして訴えを退けた。2審東京高裁も支持した。

 

上記和解において、なぜ久兵衛は新本館の場所を指定しなかったのでしょうか。建替え中に交渉をするべきではなかったのか、場所が気に入らなければ撤退すれば良い等の意見もあり得るところかと思います。

この点に関して、久兵衛側は、「ホテルオークラ側が新本館の設計が未了であることを理由として新本館での具体的立地条件は協議できないとした」と主張しているようです。和解条件として、新本館の具体的立地条件を指定することについてホテルオークラ側が新本館の設計未了を理由として拒否したため、具体的立地条件を和解時に定めることができなかったということのようです。

その上で和解条項としては、「新本館における…具体的位置、容席数…の具体的内容等については、双方協議の上、別途検討する。」旨が合意されたようです。また、新本館における具体的立地条件は決まらなかったものの、久兵衛がホテルオークラに支払う賃料は従前と同様に売上の20%とされていました。

 

久兵衛:立地を対象とする事件は取り下げた

 

しかし、実は訴状によれば久兵衛側は必ずしも出店場所にこだわってはいないようです。訴状において、二度目の仮処分事件の申立てを取り下げたことについて、「立地を対象とする」事件は取り下げたと言及しており、必ずしも立地に拘る意図ではないことが伺われます。

 

久兵衛の真の狙い・落としどころは、アーケード街での出店を前提として賃料の引き下げを図ることにあると思われます。久兵衛は、旧本館メインエリアで営業を行っていたときは「売上の20%」を賃料としていました。また、和解条項においても、新本館の指定場所は決まっていなかったものの、賃料は従前同様に「売上の20%」と定められていたようです。しかし、ホテルオークラの指定された出店場所はアーケード街でした。