ダイヤモンドオンラインに、ユニクロ・GU特許訴訟に勝ったアスタリスクが、虎の子の特許を手放した理由という記事が掲載されています。

その理由は、悲願である株式上場を実現するために、これ以上時間とお金をかけられないことが理由とのことです。そうかもしれません。

 

それはともかく、この記事の後半は情緒的で頂けません。

アスタリスクの特許に対して無効審判が数件請求されたのは、簡易な発明で先行技術との差異が小さいからです。

 

簡易な発明が特許になれば、権利範囲が広くなり他社にとっては脅威となります。

その代わり、似たような先行技術が多数あり、不安定な特許になることが多いです。

 

そういった特許を無効にするために、最高裁へ上告受理申し立てをしたり、異なる証拠で複数回の無効審判を請求することは正当な行動です。

 

「お金の問題ではなく、勝たなくてはいけない。特許がつぶされる世の中になりかねない」と言いますが、新規性や進歩性を欠く特許が無効にならなければ、他の人たちが不利益を被ります。

 

「長期戦に持ち込むことが可能な特許訴訟は大企業有利で、中小企業が特許を維持することは難しい。アスタリスクの新規上場は日本の特許制度の課題を浮き彫りにしている。」というのも、この事件の背景を正しく説明していないと思います。

 

 ただし、訴訟の元となった特許について、アスタリスクは2月に知財ライセンス企業NIPに譲渡している(『ユニクロ・GUセルフレジの「特許つぶし」にファストリが失敗、知財高裁で敗訴』参照)。虎の子の特許を手放したのは、アスタリスクの悲願である株式上場を実現するためだった。

 「上場準備を始めたのは10年前。ところがユニクロさんとの訴訟リスクを解決しないと上場できなかった。僕は新しい商品開発をして、次のステージに向かっていきたかった。訴訟のために使う時間も大きく、人生の短い時間でこんな戦いを続けることはあほらしいと考えた」と鈴木氏は振り返る。

 

 一般的な特許訴訟では、特許の有効性についての知財高裁の判決が覆るケースは珍しく、この段階で和解交渉へと進むケースが多い。

 しかしファストリは徹底抗戦の構えで、最高裁判所へ上告の受理を申し立てている。

 上告に際し、ファストリは意見書として、知財高裁の元所長である柳田国際法律事務所の清水節氏や、創英国際特許法律事務所の設樂隆一氏のコメントを付けるという念の入れようだ。

 それだけではない。知財高裁の判決後、さらに追加で三つの無効審判を起こしているのだ。

 特許の引き受け手となったNIPの訴訟費用は膨れ上がり、年間数千万円は下らないという。

 アスタリスク側はもともと19年9月、ユニクロのセルフレジは特許侵害なので利用をやめるよう、ファストリ側に特許侵害差し止め請求訴訟を起こしていた。こちらは訴訟提起から2年たっても地裁の判決は出ていない。特許の有効性を巡る訴訟の結論が出ないことには地裁が判断を下せないためで、早くても年末までかかるとみられる。

 ファストリ側が無効審判を追加で申し立ててくるのは、東京地裁・大阪地裁の特許侵害差し止め請求訴訟の結論が出るのを先延ばしにしたいという意図も透けて見える。

 特許侵害差し止め訴訟と並行して提起された特許の無効審判は計8件で、このうち7件が現在も進行中だ(1件は特許庁により特許維持の審決がされ、審決が確定している)。

 ファストリの広報は、「知財高裁の判決には法令違反・判例違反があり、看過できないと考えている」とコメントし、最高裁への上告と無効審判の追加を認めた。

 

 

 アスタリスクは上場にあたり、こうした訴訟負担も発生する特許と縁を切る必要があった。それでも「お金の問題ではなく、勝たなくてはいけない。特許がつぶされる世の中になりかねない」と鈴木氏は語り、発明者としてNIPを裁判などでサポートするスタンスを示す。

 

 NIP側も反撃に向かう構えだ。東京地裁に申し立てているユニクロ・ジーユーの特許侵害訴訟で、セルフレジの差し止め請求だけでなく損害賠償請求も予定しているようだ。

 

 NIPは特許ライセンスの一般提供を開始しており、ホームページには「1日1台1000円」のライセンス料が明記されている。現在ユニクロおよびGUのセルフレジ設置数は、推計で約5000台。年中無休で営業した場合の損害賠償請求額は単純計算で年間約18億円に上る。

 

 とはいえ、損害賠償請求に伴う訴訟コストの増加はNIPに重くのしかかる。大企業であるファストリが、係争期間を引き延ばす“兵糧攻め”をしているのもNIPに効いてくるだろう。

 

 自ら発明した特許を手放さなければ、上場ができない。長期戦に持ち込むことが可能な特許訴訟は大企業有利で、中小企業が特許を維持することは難しい。アスタリスクの新規上場は日本の特許制度の課題を浮き彫りにしている。