トヨタが電動車普及に向け、2030年末まで特許無償提供をするとのことです。

当初、ハイブリッド車の特許を無償提供と報道されましたが、正しくは「電動車の特許」で、ハイブリッドだけでなく電気自動車や燃料電池車も含むものになります。

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1178094.html

 トヨタ自動車は4月3日、同社の車両電動化技術に関して約2万3740件の特許実施権を2030年末まで無償提供すると発表。同日、同社 取締役 副社長 寺師茂樹氏が名古屋市内で記者会見してその狙いなどを話した。

 今回、同社は2030年末までの期限付きで、モーター約2590件、PCU(パワー・コントロール・ユニット)約2020件、システム制御約7550件、エンジン・トランスアクスル約1320件、充電機器約2200件、燃料電池関連約8060件、計約2万3740件の車両電動化技術の特許実施権を無償提供することを発表した。

 

 記者会見で寺師氏は、世界各国でCO2規制の強化、電動車を推進する動きが活発化している動向を示すとともに、トヨタでは2017年に「トヨタ環境チャレンジ2050」と電動車の普及に向けた2030年までの販売計画を公表し、2030年の電動車の販売目標をHV・PHVを450万台以上、EV・FCVを100万台とし、さらに2050年にはCO2排出ゼロを目指していることを紹介。

 

 また、これまで同社がハイブリッド車に向けて開発してきた、モーター、バッテリー、PCUといった電動化技術については、FCV、EV、PHV、HVに展開できる電動化のコア技術であることを強調した。

 

また、以下では元トヨタの方が、無償開放の狙いを推測しています。

ハイブリッド技術の特許を無償提供すれば、HEVの世界的な普及を後押しすることができると踏んだのだろう、とのことです。

 

数年前、トヨタは電気自動車に乗り遅れたという報道が相次ぎました。

しかし、電動化に関する技術の蓄積は圧倒的です。

電気自動車に乗り遅れたどころか、電動化車両の盟主と思います。

 

そして、特許権を振り回して高額なライセンス料や損害賠償を得るビジネスは、時代遅れになってきたと言えます。

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01910/

--トヨタによる特許の無償公開をどう見るか。

 

藤村氏:トヨタらしいと言える。かねてトヨタは、「環境車は普及させて初めて意味がある(環境負荷軽減に貢献したと言える)」という考えの下、ハイブリッド車(HEV)を環境車の「現実解」と主張してきた。特許を囲い込めば、現実解であるHEVの普及が遅れる。そこで、特許を無償提供することでHEVの普及を加速させるという考えなのだろう。目先の利益を追わず、環境負荷軽減やお客様志向を優先させたということだ。

 

 欧州の自動車メーカーはHEVを造れずにもがいている。このままでは欧州の2021年規制をクリアすること、すなわち二酸化炭素(CO2)排出量を95g/kmに抑えることは難しい。

 

 「クリーンディーゼル」と銘打ってディーゼルエンジン車を推す構想は、2015年に発覚した「ディーゼルゲート」、すなわち独フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)によるディーゼル車の排出ガス不正問題でつまづいた。そこでHEVやプラグインHEVを造りたいが、トヨタによるがんじがらめの特許で造れない。仕方がないので電気自動車(EV)を前面に打ち出したが、思ったほど売れない。そこで、2017年から48Vマイルドハイブリッド車〔48V電源部品を使った簡易ハイブリッドシステム(48Vマイルドハイブリッドシステム)搭載車〕の開発に力を入れ始めたが、それだけでは同規制の達成は難しいという現実に直面している。達成できなければ、欧州の自動車メーカーは巨額の罰金を払わなければならない。

 

 こうした状況でハイブリッド技術の特許を無償提供すれば、HEVの世界的な普及を後押しすることができるとトヨタは踏んだのだろう。