こんばんは。

昨日届いた大量の論文模試答案も、何とか採点が終わり、昼過ぎに郵便局へ持って行きました。本試験の直前の直前ですが、明日には届くでしょう。ほっとしました。


明日以降、論文模試を受ける方はいないと思いますので、少々ネタバレとも言える話を書きますが、発明の要旨認定に関するリパーゼ最高裁判例について、正しく説明出来ている方は少数でした。


平成3年のリパーゼ事件では、審査における発明の要旨認定について、以下のように述べています。


「特許法二九条一項及び二項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条一項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ,この要旨認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。


一方、特許法第70条2項では特許発明の技術的範囲について、


「前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」


と規定しています。

これと発明の要旨認定に関する特段の事情を混同している方が目立ちました。


発明の要旨とは、審査や特許無効の抗弁の際に判断される発明の外延です。特許発明の技術的範囲は、権利行使時に解釈される権利範囲で、両者は概念として異なります。


なお、平成22年(ネ)第10043号のプロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する大合議第6号事件では、


『本件のように,「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている前記プロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合の発明の要旨の認定については,前述した特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定方法の場合と同様の理由により,① 発明の対象となる物の構成を,製造方法によることなく,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときは,その発明の要旨は,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと認定されるべきである』


と述べ、発明の要旨は、特許発明の技術的範囲と同様に認定すべきと判示しています。


プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する大合議第6号事件は上告受理申立がなされ、まだ未確定のため、試験に出る可能性は低いと思います。

しかし、リパーゼ事件は最高裁判例で、いつ出題されてもおかしくありません。試験委員も関心を持っている判例と思います。


受験用の判例集で良いので、見直しておいた方が良いでしょう。