ソルジェニーツィン『マトリョーナの家』読書会のもよう(2017.3.31) | 信州読書会

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2017.3.31にロシアのノーベル賞作家 ソルジェニーツィンの

『マトリョーナの家』の読書会をツイキャスで行いました。

皆さんから頂いた感想はこちら


私の感想です。


『二つの戦争 三人の男』

(引用はじめ)

『これが実の弟でなかったら、お前たちふたりともぶち殺してやるところだって!』
その怖ろしい言葉は、四十年もの間、古い手斧(ちょうな)のように、この家の片隅に秘められていたのだ。


(引用おわり)

マトリョーナが、なぜあれほど、中二階にこだわったのか?

マトリョーナは、エフィムの帰ってくるのを、心のどこかで最後まで信じていたのだ、と私は思う。エフィムが帰ってくる可能性がある限りは、彼女は、家をそっくりそのままにしておきたかったのだ。マトリョーナは、まだ、エフィムを愛していたのだ。いや、愛そうとしていたのかもしれない。扶養者の喪失を証明して、年金を受給することはエフィムの死を認めることだ。彼女に夫の死を認める権利があるのか? 最初の夫の死を認めてしまったことで、ファジェイの愛を裏切ってしまった彼女が、生活が苦しいからといって、エフィムの死を認めていいものだろうか? もし、エフィムがひょっこり帰ってきたらどうするつもりだったのだろう。彼を待っていたからこそ、彼女は貧困の中で耐え忍んで、生きていたのではないのか? 法的な手続きによって、あの家は、マトリョーナと養女キーラのものになってしまった。その裏切りが、ファジェイの神経を刺激したのだ。彼が、キーラへの生前贈与を勝手に進めたのは、いよいよ、本格的に、あの手斧を振り下ろす時がきたと確信したからだ。数学教師が、下宿のお願いをしたとき、マトリョーナは他の下宿先を勧めて丁寧に断ったが、彼が再度頼み込んだときは顔に喜びの色を表していた。そして、彼女が、数学教師の来歴を尋ねなかったのは、戦犯として長い間、どこか知らない土地で服役してから現れたこの男に、エフィムの面影を重ねていたのからかもしれない。中二階が運び出されたときに、思わず勝手に数学教師の胴着を着てしまったのは、エフィムと数学教師を、混同したからだろう。数学教師に、つよく叱られることは、夫に叱られることの代償だったのだ。さらに、エフィムの裏切ったことへの自責の念が、彼女に、あの陰惨な轢死事件を引き寄せたのだ。

 
(おわり) 

読書会の模様です。








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