堪航性担保義務3 -違反の効果 | 海事法まとめノート

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英国海事法を勉強している日本の弁護士です。海事法の知識をまとめています(記事の内容は特段の断りがない限り、英国法の解釈を示したものとご理解ください)。質問は歓迎ですが、回答にはお時間をいただきます。現在都合により更新しておりませんが、6月頃から再開予定です。

仮に堪航性担保義務違反があった場合に、傭船者はどのような手段をとることができるでしょうか。

 

Hong Kong Fir Shipping Co v Kawasaki[1962]2 QB 26. において、 控訴院は、堪航性担保義務は中間的条件であると判示しました。すなわち、その違反が重要であると認められる場合には傭船者は当該契約を解除できるものの、そうでない場合には損害賠償のみできるということになります。

 

傭船者は、当該契約から得ようとした全ての利益を実質的に失う場合にのみ、傭船契約の解除が可能であると解されます。上記事件においてDiplock LJは、”an event which will deprive the party not in default of substantially the whole benefit which it was intended that he should obtain from the contract” と表現しています。

 

仮に船舶が出航する前に不堪航が発見された場合、その不堪航が、契約に係る全ての利益を実質的に失わせる程度であり、契約の目的が達せられなくなる前にそれを修正することができないときには、傭船者は当該契約の義務から免れると解されます。上述のHong Kong Fir Shipping Co v Kawasakiは、機関室のスタッフの人数及び能力が不足していた事案ですが、24ヶ月間の定期傭船契約において、5ヶ月間修理のために船舶を利用できないことは、契約を解除するのに十分でないと判断されました。

 

一方で、その不堪航が重要なものでない場合は、損害賠償請求のみが可能です。

 

定期傭船契約のフォームには、不堪航の場合の解約権が規定されている場合があります。

例えば、Baltimeフォーム(2001年修正版)の21条では、"Should the Vessel not be delivered by the date indicated in Box 22, the Charterers shall have the option of cancelling."と規定しています。Delivery時には”the Vessel being every way fitted for ordinary cargo service"1条)でなければなりません。本船はこの1条に厳格に従っていなければなりません。仮にHague RulesHague Visby Rulesが摂取されているとしても、due diligenceを尽くす義務に軽減されることはないと解されています。

 

一方で、船舶の出航後に不堪航が発見された場合、それが重大である場合には、契約の解除をすることが可能です。