彼女はいつも机に落書きをしていた。
今日も、昨日も、多分明日も。多分ずっと。
授業中も、
休憩時間も、
昼休みも、
ホームルーム中も、
放課後も、
落書きをし続けていた。
クラスのみんなは、
彼女が何を書いているのか、
訝しがっていた。
でも、見にいくことまではしなかった。
でも僕は、彼女がトイレに行った隙を見計らって、机の上を覗いた。
隣の席だから、今までだって見ることはできたけど。
初めて、覗いてみた。
そこには、
机いっぱいに、
誰にも受け入れられないような、
落書きがされてあった。
何か嫌な感じがした。
その日から、彼女が放課後、
家に帰るために席を離れるまで、
勉強をするフリをして、
隣で見守っていた。
彼女はいつも僕に背を向けて書いていた。
背を向け、机の上を隠すように。
僕はどうしようかと考えた挙句、
彼女が帰った後、こっそりと落書きを消した。
幸い、鉛筆で書かれていたので、消しゴムで消せた。
消えないペンで書くほどの勇気はなかったのだろう。
毎日、毎日、消し続けた。
1週間で一つの消しゴムを使い切るほどだった。
毎日、消し続けた。
ある時から、
彼女の身体が震えていることがあった。
彼女がついに「おかしくなったのでは?」
と思い、僕は焦った。
でも、彼女は書き続けた。
彼女にとってそれは、
落書きではないのかもしれない。
彼女にとっては、
書き続けることで心が落ち着くのだろう。
彼女にとっては、
楽しいのだろう。
彼女にとっては、
何かの吐け口になっているのだろう。
震えはおさまらない。
むしろ激しさを増している。
そう思った頃、彼女は転校した。
担任の先生は、「家庭の事情で」
って言ってたけど、
僕は違うと思う。
だって、僕がイジメてたんだもん。
隣の席の闇
でした。
フィクションです。
ありがとうございます。
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