写真は4月末頃に友人から頂戴してきた旧女王1枚群。その後に建勢が進んで夏分蜂期を迎え王台生産を始めた。間もなく人工分蜂や移植用王台の切り出し適期を迎えるため、その前に旧女王を1枚群として再び取り出した(人工分蜂)。

 

王台にはまだ蓋掛けされておらず幼虫と卵しか入っていないが、分蜂期を迎えた蜂群では働き蜂産卵はすぐには始まらない。また、王台に蓋掛けされればいつでも分蜂行動が起きて旧女王を失ってしまうので、[ 分蜂行動発生前である事 ] と [ 働き蜂産卵が始まる前に新女王が羽化出房してくる事 ] を日数計算した上で人工分蜂してゆく必要がある。

 

よって旧女王の取り出しタイミングを把握するためには、[ 王台の作り始め ] を知る必要がある事と [ 王台内蜂児の日齢 ] を知る事が必要で、1つか2つの王台だけ蜂児日齢が進み過ぎている場合にはこれを切除し、一応に王台内蜂児の日齢を合わせる操作も必要だ。それゆえに [ 旧女王の取り出しタイミングを把握する作業が必須 ] となる。その一連の操作・作業を、昨年の夏分蜂期に掲載しており、今回もここに紹介する。

 

先ず旧女王を探すため、手前の巣枠から順次内検を進めていった。同時に王台確認および王台選別をしており、私の眼にかなう王台があった巣枠の背には、目印として画鋲を刺してゆく。後日におこなう本格的な人工分蜂と王台切り出しの際には、この画鋲を参考にその直下にある王台を利用する。このほか分蜂期を迎えたため大量の雄蜂児を生産しているので、この雄蜂児のある場所の巣枠背には青色画鋲を刺して目印にした。

 

蜂群規模が大きく成長し成蜂量が増加した事から王台が多く作られており、数日前に全王台を除去したのだが本日に内検にて 15個の王台を確認できた。

 

旧女王は最も奥の巣枠で発見し、西洋蜜蜂5枚箱(10枚箱の上に載せているのが5枚箱)へ入れ、長野市里山地区にある杉林蜂場へもってゆき設置した。

 

写真は雄蜂児を切除しているところ。この蜂群が生産していた雄蜂児は 写真の雄蜂児量の5倍ほどあり、静かにナイフの刃を入れて切除した。北信流では [ 西洋蜜蜂ではダニ駆除・ダニ防除のために雄蜂児を切除 ] するが、[ 日本蜜蜂では未交尾新女王を発見しやすくするために雄蜂児を切除 ] している。日本蜜蜂の雄蜂は女王蜂と色合いが同一なので、巣内にあまりに雄成蜂が多いと未交尾新女王を発見しにくくなってしまうからだ。そう、西洋蜜蜂と日本蜜蜂とでは雄蜂児切除の目的が全く異なっているのである。

 

巣枠式で飼育していて、私のように [ 日本蜜蜂の分蜂を人為的に完全にコントロール ] しようとする場合には、日本蜜蜂の分蜂期における雄蜂児切除は非常に有効で、この作業をするとしないとではその後に未交尾新女王が生まれてきた時におこなう [ 未交尾新女王の奇形の有無等 ] を確認する時および立て続けに更なる人工分蜂をする時に、雄蜂成蜂に目がくらむ事なく未交尾新女王を発見できてとても便利なのだ。ただし [ 非巣枠式 ] で日本蜜蜂を飼育する人にとっては人為的に分蜂をコントロールする事はほとんど不可能であるし、その必要性がほとんど無いので雄蜂児切除は不要なものであろう。

 

この蜂群の女王を5枚箱へ取り出した後には、写真のように強引な巣盤整形も可能だ。女王を失った蜂群では逃去行動の心配が無いので、写真のように貯蜜で張り出した貯蜜圏はこのようにザクザク切って巣底へ落としておけばよい。落下させた蜂蜜は働き蜂たちが飲んで片付けてくれ、残った巣屑は後日に私が片付ける。

 

ただし、巣底が一面に蜜だらけになるようなことをすると成蜂が巣盤から剥がれて巣門前などに蜂球になってしまうので、写真のように切り落とせる量は少量だけで、大量に切り落とす場合には容器へ切り落とし、採蜜するか給餌器へ入れて巣底が強く蜜で汚れることが無いように配慮する必要がある。

 

そんな貯蜜圏を大きく巣盤整形するのが面倒な場合や別の機会におこないたい場合には、最上段にある写真のように蜂児圏の外側へ整形すべき貯蜜巣盤を持って行って置いておき、後日に巣盤整形あるいは採蜜する。だが、この蜂場ではこれから蜜源窮乏期に入るので採蜜はできない。

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巣枠式で飼育して分蜂行動を完全にコントロールしようとする場合には、今回紹介したように結構手間がかかる。これを複数群について同時進行でおこなう場合には、管理上の都合から対象の全蜂群の王台内蜂児日齢を合わせる必要が出てくるので更に手間がかかる。

 

ところが内検毎に逃去が起きてしまったのでは日本蜜蜂を飼育できなくなってしまうし巣枠式で飼育している意味がなくなるので、これを防止するために [ 北信流 低刺激内検法 ] の習得と使用が必須になる。ところが低刺激内検法の習得には [ 高頻度の内検 ] が必要になるため、これに伴う逃去行動を超越してゆかねばならない。それゆえに繊細に日本蜜蜂を観察し、様々に変化を見せる日本蜜蜂による刺激への反応を読み取って内検に活かしてゆく必要がある。