実は暖地の養蜂家からこんなメールが届いている。

① この春の分蜂期、立て続けに6回の自然分蜂をした蜂群について、成蜂が減少し過ぎてそこに強いスムシ被害が起きて壊滅状態。まだ成蜂がいて活動している様子なので、何とかして助けたいのでその方法を教えて欲しい。

② この強いスムシ被害を受けた巣箱から新たな綺麗な巣箱へ日本蜜蜂を入れ替えたいのでその方法を教えて欲しい。

 

およそこのような内容のメールである。自然巣増巣式(非巣枠式)で飼育している日本蜜蜂養蜂家において、たまに耳にする話である。よってこのブログ閲覧者の皆さんの中にも経験者がいるのではないだろうか。

 

この2つの質問について、北信流をしてもハッキリ言って90%の確率で全滅あるいは逃去に向かいそうな蜂群に思われる。現物を観察していないのでどの程度のスムシ被害なのか不明であり、何とも難しそうな話である。

 

私の日本蜜蜂は、初めて日本蜜蜂を飼育開始した時から [ ラ式巣枠 ] と [ 西洋蜜蜂飼育箱 ] を使った巣枠式飼育でやってきている。巣枠式飼育ゆえに質問された①の問題は起き得ない。巣枠式では常に [ 人工分蜂 ] によって日本蜜蜂を造群するので、自然分蜂自体が起こらない。巣枠式日本蜜蜂において自然分蜂が起きるのは [ 王台整理などの蜂群管理に失敗した時 ] である。

 

( 人工分蜂前に各巣枠にできている王台を確認し、王台内の蜂児日齢ごとに色分けした画鋲を巣枠背に刺している。この蜂群は春の分蜂期に入居してきた旧女王群で、建勢が進み入居から1ヵ月半後ほどに夏分蜂期を迎えた時の写真。 )

 

( 王台確認と王台選別が完了したところ。これから人工分蜂を開始する )

 

( 青箱で飼育していた日本蜜蜂を2群に人工分蜂 )

 

( 旧女王群から切り出してきた王台を移植して、まだ建勢途中で小柄な捕獲群を2群に人工分蜂 )

 

( 春、越冬群を3群に人工分蜂 )

 

( 春に捕獲した蜂群。新働き蜂成蜂の羽化直前ゆえに成蜂数が激減しており危険な状態 )

また、[ 常に成蜂量(成蜂バランス)を確認しながら人工分蜂 ] するので [ 成蜂が減少し過ぎて強いスムシ被害が起きる ] という問題は起き得ない。ただし、人工分蜂後に誕生した新女王が産卵した卵が成蜂として羽化出房してくるまでに、大量流蜜による過労死や寿命死によって写真のように成蜂量が減少し過ぎる事故はたまに起きるが、通常はそうなる前に健全群から引き抜いて来た羽化出房中の蜂児巣盤を助っ人挿入して成蜂激減の事故を回避するので、この問題も稀なものである。

 

巣枠式飼育における日本蜜蜂の巣箱入れ替えはとても簡単で、例えば日本蜜蜂5枚群があったとする。巣枠1枚の入れ替えに10秒かかったとすると巣枠5枚で50秒。元箱に残った成蜂を巣門前の地面に [ ガツンッ ] と1撃して成蜂を地面に落として巣箱入れ替えが完了する。よって蓋の開け閉めまで入れても3分とかからないで巣箱入れ替え作業は終わる。この [ ガツンッ ] による残り蜂入れ替え作業をするために私の日本蜜蜂巣箱は [ 地置き ] になっているのである。

 

青色コンテナの上に巣箱を載せている写真もあるが、このような場合には付近の落ち葉を巣門前に盛り上げて [ 地置き ] と同じ効果を持たせてから巣門前に [ ガツンッ ] と1撃している。これは巣門前(巣箱外)に落下したした成蜂が巣門から巣箱内へ自身で歩いて戻れるようにするためのもので、仮に女王が巣門前に落下したとしても自身で歩いて戻れるため、採蜜作業や巣箱入れ替えの時にとても便利な巣箱設置の方法となっている。

 

なお、巣箱入れ替えによる逃去経験は皆無だ。私の場合には巣箱入れ替えをしながら、ついでに蜂群の状態確認など王台検査・王台除去・産卵確認・巣盤整形等の内検とその他の蜂群管理作業を並行して同時におこなうのが常なので、巣箱入れ替え作業にはもう少し余計に時間がかかっている。

 

いずれにしても [ 巣枠式で飼育されている日本蜜蜂はとても扱いやすく巣箱入れ替えがごく簡単であり、日本蜜蜂への刺激が少ないので巣箱入れ替え作業では逃去行動は起こらない ] という事を知っていただきたい。

 

②については、どの程度にスムシ被害を受けているのか分からないが、一旦バランスを失った日本蜜蜂は健全群へ戻す事が難しいため、被害があまりに酷いような場合には蜂群の復活を諦めてしまう事も良策である。

 

とかく日本蜜蜂養蜂家や趣味西洋蜜蜂養蜂家には、蜂病を発症した蜂群やアカリンダニ群を大切に保護しながら何とかして復活させようと飼育を続行する人が多い。蜂群を大切にしたい気持ちは理解できるが、これは蜂病の種類によっては [ 家畜伝染病予防法 ] 等の法律に違反・抵触する事になるので、蜜蜂を飼育している人はこのあたりについてしかりと確認しておいてほしい。そう、蜜蜂には牛やブタなどの [ 口蹄疫 ] 、鶏の [ 鳥インフルエンザ ] と同じ厳重な法律が定められているのである。