昨年は国連事務総長が [ 地球沸騰 ] と表現したほど暑い夏だった。そして今冬は暖かかったり寒かったり。そんな今越冬を終えた時期である現在、多くの養蜂家が西洋蜜蜂を全滅させて大変な蜂不足という。このような事が起きるのではないかということは、私は昨秋には気付いていた。

 

私の養蜂弟子のうち2人が [ 繊細に管理していたにもかかわらず、西洋蜜蜂の蜂群規模が縮小しているものが多い ] との情報をくれた事から伺い知る事ができた。私の弟子ゆえに雄蜂児切除を含めたミツバチヘギイタダニ(以下、「ダニ」と略す)の防除は満足していたのだが、それでも幾らか蜂群規模が縮小したというのだ。すぐに私は数人の養蜂弟子に電話して現状を聞いたところ、やはり同じ傾向があるという事だった。

 

こうなると西洋蜜蜂を繊細に管理できていない北信流養蜂会以外の養蜂家にあっては、ダニ被害によって大打撃を受けている事は間違いない。

・・・とここまでは昨年末の話しである。そして越冬を終えて春になった現在、多くの養蜂家の下で西洋蜜蜂が全滅して蜜蜂不足になり、蜂群価格が高騰しているという情報が入ってきた。

 

今度は北信流養蜂会 会員以外の蜂友へ電話して状況を確認してみたところ [ 昨年は妙に暑く、今冬は暖かかったり寒かったりで西洋蜜蜂蜂のほとんどが全滅した ] と回答してくれた。彼は古参の養蜂家で既に高齢のためか、ダニの影響を認識できず西洋蜜蜂の不調を天候のせいにしていた。彼のところへは後日にお茶を頂戴しに出かけて行き、この時に話を直接伺って対策法についてアドバイスしてくるつもりでいる。

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今春までに起きていた西洋蜜蜂絶不調および全滅について、結論からいうと [ ダニ被害 ] によるものである。しかも [ 養蜂家自らダニ被害を増幅させて全滅させている事例がとても多い ] ことも今回の特徴となっている。

 

この [ 養蜂家自らダニ被害を増幅させている ] という件に関しては、以前からこの傾向が強かったのだが、なぜかそれを指摘している文献が皆無で、この過ちを助長する内容の養蜂解説書ばかりである事に私は驚いている。ちなみに今日現在、私の知る限りでは [ 養蜂家自らダニ被害を増幅させている ] ということについてしかりと指摘して書いているものは、養蜂産業振興会の会報と私のブログ内だけである。西洋蜜蜂の [ 女王の羽切による分蜂群の飛び去り防止 ] や [ 雄蜂切除によるダニ増殖抑制効果 ] についての価値などと同じ様に、少し遅れていずれ日本蜂養蜂協会の養蜂解説書にも紹介されてくるようになると考えているが、いずれは養蜂家の皆さんの目にしっかりとした形で見ていただけることになると予想している。

 

先ず今回の問題の重点要素は 3つ。

① ミツバチヘギイタダニの増殖速度が速くなったり薬剤耐性を獲得している個体割合が随分と増えた

② ダニ駆除剤投薬のタイミングを間違え、あるいは誤解を受ける形で養蜂解説書で流布しているため、あるいは養蜂家自身によって(実際には誤りなのに)正しいと思い込んで投薬している投薬タイミングによって、[ 養蜂家自らダニ被害を増幅させている ]

③ ほとんどの養蜂家が [「雄蜂児を利用したダニトラップ」によってダニ駆除できている ] と誤解している

というもの。

 

このあたりは私の直弟子であれば度々この話を耳にしており、誤った解釈や施術をしているとすぐに私に指摘されるので、北信流養蜂会 会員であれば [ 養蜂経験ゼロから始めた養蜂家であっても1ヵ月後、遅くとも3ヶ月後には理解し習得 ] しているダニ駆除技術及びシステムである。

 

上記のうち②③などはとても危険なものであり、

[ 雄蜂児トラップを使ってダニ駆除を時々おこない、晩夏にダニ駆除剤を投薬し、初冬になって育児が消える頃に2回目のダニ駆除剤を投薬した ]

という養蜂家が多いと思うが、北信流養蜂会の者がこの話を聞いた場合には

[ そのダニ管理の方法では、2回目のダニ駆除剤投薬直前にはその西洋蜂群の全滅または大幅縮小が既に決定していますよ ]

と回答するはずだ。

 

やはりこのダニ駆除法にかかわる講習会等では、私が指摘する [ 急所 ] を説明してあげるようにしないと、各養蜂解説書で書かれている通りに実践して誤ったダニ駆除剤投薬をしてダニ被害を養蜂家自ら増幅させてしまうようだ。

 

これまでのものはダニ寄生のある蜂群を使用して作出されてきた研究成果および養蜂技術、養蜂解説書ゆえに、(私がこれを指摘した事がキッカケであろうと思うが)現在では一部の研究者がダニ寄生のほとんどない蜂群を使ってこれらについて見直し確認試験を始めている。ならば、そのついでにこれまでに流布されているダニ駆除方法について、ぜひ訂正し見直しをしてほしい。間違っている点、誤解しやすい点は唯一1点のみ。簡単な事なのでぜひ日本養蜂協会を先頭に訂正し書きなおしてほしいものだ。