寄生虫は昔の病気だと思いますか? サバを食べて「アニサキス」に感染する人は今でもいます。長さは数センチメートルです。胃の中に感染して粘膜に潜り込みます。激痛で来院されます。治療は内視鏡で粘膜ごとつかみ取ります。尻尾の部分だけつかみ取ると頭が粘膜の中に残り症状が改善しないからです。港町で魚を生で食べる文化のあるところに多い病気です。一度魚を冷凍すると死滅すると言われています。

 

「サナダムシ」とは正式名称ではなく正式には「条虫(ジョウチュウ)」といいます。要するに紐状の寄生虫を条虫と言います。長さは数メートルに及びます。

 

条虫にはさらに裂頭条虫、有効条虫、無鉤条虫など種類があります。今でも患者さんがいます。大阪の病院に勤務していたころ条虫症の患者さんが来院されました。「お尻から紐が出てきた」という訴えです。腹痛や下痢や発熱はありません。感染源はサケやマスの刺身です。こちらも冷凍すると死滅するそうです。治療は駆虫薬のプラジカンテルと下剤を内服することです。

 

「どこで魚を食べたのか?」と尋ねると○○寿司屋といわれました。実は私もよく行く寿司屋でした。水槽から生きた魚を取り出してさばいてくれる寿司屋は新鮮と思いがちですが感染予防の観点からは冷凍ものの方がよいのです。その後その寿司屋には行っていません。

 

食品衛生法によるとアニサキスと同様に保健所に届け出る必要があります。しかし、保健所に届け出る医療機関が少ないそうです。この患者さんの件は届け出ました。

 

厚生労働省ホームページの抜粋です。

 

Q10. 飲食店や魚介類販売店で提供したものが原因で、アニサキス食中毒が発生した場合、飲食店や魚介類販売店には、どのような対応が行われますか?


食中毒やその疑いの連絡をうけた保健所は、直ちに患者への調査を開始すると同時に、食中毒の発生源と疑われる施設への立入調査を行います。立入調査の結果と、体調不良の患者への聞き取り調査の内容をもとに、食品衛生法第55条に基づき、被害拡大防止対策、再発防止対策が完了するために必要な期間・範囲で営業停止の行政処分がとられることがあります