「誤診は起こるものというと患者さんからの信頼を損なうので言うべきではない」という考え方には同意できません。

むしろ

「誤診しても被害を最小限にとどめる努力を医者は考えている」という考え方が事実だと思います。

 

神戸大学感染症科の岩田健太郎教授は直接指導を受けたことはありませんが、私が神戸大学で働いていた時に間接的にお世話になりました。

 

岩田先生の言動は時に仲間の医者からうとがられることがあります。しかし私には論理的で合点がいく点も多く、尊敬する医師の一人です。

 

岩田先生が愛知県の名古屋第二日赤病院での高校生死亡事故を取り上げて「誤診」について意見を述べられています。

 

以下、記事の抜粋です。

「誤診は望ましくはないが、誤診をしない医者は皆無だ。誤診は一定の頻度で起きる。超一流のバッターでも全打席でヒットが打てないのと同じで、これは厳然たるファクトである。特に、初対面の患者の容態を救急外来で正確に診断することは、ましてや稀な疾患であるSMA症候群であると言い当てるのは、ベテランの優秀な診療医でも困難であろう。 そういう誤診が「ある」という前提で、我々医療者は行動する。繰り返しの診療の中で、当初分かっていなかった現象をつかみ取り、最終的には正しい診断に近づこうとする。場合によっては何週間という長い時間をかけてようやく病名が分かることもある。誤診は毎日、世界中の医療機関で起きている。これがファクトであり事実だ。その事実を無視し、誤診が「あってはならないこと」であるかのように報じるのは極めてミスリーディングである。」