66歳男性

アルコール性肝硬変末期です。肝硬変から肝不全の状態です。それでもアルコールが止められずに他院に通院していました。

 

いよいよ下肢の浮腫と倦怠感から動けなくなり、御家族が困ったため紹介状を持って外来に受診されました。腹部には”メズサの頭”と言われる血管の拡張を認めます。門脈圧が高くなっているサインです。姿勢時振戦が出現しています。肝性脳症を発症しているのでしょう。外来で採血すると低アルブミン 汎血球減少 ビリルビン高値です。

 

いよいよ死期が近いとご家族に説明しました。自宅での介護困難と看取り目的のため入院となりました。体はビリルビン高値によって皮膚が黄色くなっています。入院後皮膚の掻痒感を訴えています。ビリルビンが高くなると皮膚掻痒感が出現します。

 

肝疾患による皮膚掻痒感に対しどのような薬を使うのかを調べてみました。PubMedにて「hepatic pruritus(肝性掻痒感)」というキーワードから総説の論文を捜しました。Treatment of Pruritus Secondary to Liver Diseaseという論文を見つけました。

Curr Gastroenterol Rep. 2019 Jul 31;21(9):48. doi: 10.1007/s11894-019-0713-6.

 

第一選択薬はコレスチラミン

第二選択薬はリファンピシン

第三選択はベザフィブラート

第四選択はナルトレキソン

第五選択はセルトラリン

とあります。

このうちナルトレキソンは医療用医薬品としての保険適応はありません。またコレスチラミンは当院で採用されていません。(使用頻度が低いため在庫を置くとコストが高くなるため)

 

リファンピシン ベザフィブラート セルトラリンは使用可能です。それぞれの薬剤についてランダム化コントロールトライアルの論文を読み効果の高い薬剤を使用することを考えています。終末期では本人の苦痛を取り除く医療を第一に考えます。なるべくご家族に会っていただいて最後の時間を大切にしていただきたいと思っています。