66歳女性

 

かかりつけ医なし 内服なし 独居の患者さんです。

散歩中に倒れ込むところを通りがかりの人が見ていたため救急搬送となりました。

 

「ふらついて後ろにひっぱられるような感覚で歩行できなくなった」との訴えです。

来院時は意識障害が軽度あります。血圧が255/98mmHg、発熱なし、酸素の異常なしです。胸痛(-) 腹痛(-) 頭痛(-) 背部痛(-)  診察でも麻痺はありません。

 

頭部CTでは脳出血はありません。本人に痛みの訴えはありませんが、動脈解離を除外する目的で胸腹部CTを撮影しました。こちらも異常なし。血液検査でも意識障害の原因となる電解質の異常はありません。

 

高血圧緊急症の状態と考えニカルジピンの持続注射で血圧を160mmHgまで低下させました。意識レベルは変化ありません。神経症状を伴う高血圧ですので「可逆性後白質脳症」を疑いました。高度の高血圧は「可逆性白質脳症」の危険因子です。

 

可逆性白質脳症は頭部MRIで診断します。当院にはMRIがないため高次医療機関に搬送の依頼を行いました。

 

高次医療機関に電話をかけると受付の事務員に「何科への依頼ですか?」と質問されます。一般的には総合内科で入院となることが多いのですがその病院には総合内科がありません。血圧高値だけなら「循環器内科」かもしれませんが可逆性後白質脳症なら「神経内科」かもしれません。しかしすべての内科医が管理できる必要がある疾患だと思います。

 

そもそも何科の医者が「可逆性後白質脳症」を管理しているのかは病院によって異なるためこちらに質問されてもわかりません。しかし「何科か決めて頂かないと困ります」とのこと。

実にばかばかしい質問です。

 

「では循環器内科にお願いします」と伝え、循環器内科の担当の医者に変わってもらいました。「高血圧緊急症から可逆性後白質脳症(PRES)を疑っています」と伝えると「可逆性・・・? 何ですか?」との返事。どうやらこの医者は可逆性後白質脳症という疾患を知らないようです。(大丈夫かな?・・・と思いつつ 病状を説明しました。)

 

細分化された医療のなかでは自分が専門としない領域の知識が低い医者も結構いるのです。