将来臨床医として仕事をするのであれば、医師免許をもらって2年間は初期研修を受けることが義務となっています。この2年間の初期研修期間に自分の専門を決める必要はありません。内科、外科、産婦人科、小児科、地域医療等をローテーション研修していきます。

 

この初期研修をどこで受けるかははとても重要です。そしてそれに輪をかけて誰に教えてもらうかは更に重要です。初期研修は2004年から義務化されました。それまでの制度では大学を卒業してすぐに専門医療に進むことで、自分の専門領域以外の患者さんを診られないという弊害を考慮して始まりました。

 

制度は出来たのですが指導医のレベルはまだかなりの差があります。また病院によってもレベルにはかなりの差があります。初期研修医の仕事には「労働」という義務と自己を高める「研修」があります。この二つはイコールではありません。普遍的にどこの病院でも必要とされる能力を獲得することは研修ですが、その病院でしか通用しないローカルルールは労働でしかありません。この2つの違いを理解して研修を受けている研修医は意識が高いと思います。

 

病院にとって研修医は労働力です。研修医は必死に与えられた仕事をこなすのですが、実は労働にしかなっていないことも多々あります。忙しすぎる病院では研修医に考える時間がありません。与えられた仕事をこなすのが精一杯になるからです。条件反射で体は動くようになります。差し当たってルーチンワークのように目の前の仕事をこなすことはできるようになります。しかし頭を使って咀嚼していないので何故それをするのかという質問には答えられません。

 

将来、外科医になるから内科研修を受けなくてよいと考えている研修医を時々見かけます。しかし、一流の外科医は内科的思考のできる外科医です。そして周術期管理という点では内科的思考は必要なのです。手術がうまくて速いだけの外科医ならあなたの代わりはいくらでもいます。

 

初期研修医に「自分がまともな研修を受けられていると思うか?」という質問に、研修医は答えられません。それは他と比較したことがないからです。「どこで受けても研修なんて同じ」と思っている医者はまともな研修を受けたことがない医者だと思います。

 

さすがに今ではあり得ないと思いますが、私は初期研修時代に月10回の夜間当直を行っていました。これでは考える時間がありません。自分のマイナスの経験から研修病院選びの重要性を考えるようになりました。

 

くれぐれも初期研修病院選びは慎重に。