「ホスピタリスト」とは医者の業務の中で総合内科医や総合医としての素養があり患者さんの病状全般を管理する医者のことを言います。資格を持っている医者ということではなく、能力があるという意味です。(資格があっても能力のない医者がいるので)

 

例えば、既往に副腎不全・心不全・肺気腫がありいろいろと外用薬や内服を服用している患者さんがいるとします。この患者さんが手術のために外科に入院となった時、外科医が周術期に副腎不全や心不全・肺気腫を同時に管理できれば「ホスピタリスト」として優秀な外科医になります(この場合、手術がうまい下手を評価しません)。多くの場合、周術期の内科管理を外科医は内科医に依頼します。

 

その時は入院時の主科を外科として、内科は併診という形で患者さんの内科管理を行います。

 

優秀なホスピタリストは糖尿病・肺気腫・副腎不全・感染管理などは一人の医者で管理します。もちろん判断に迷うときはそれぞれの専門科に相談することはありますが。

 

しかしホスピタリストがいない病院では心不全は「循環器内科医」に、副腎不全や糖尿病は「内分泌内科医」に、肺気腫は「呼吸器内科医」に依頼するのです。それぞれの専門家は自分が得意とする臓器しか診たくないのでこのようなことが起こりえます。特に大学病院になるとこのような傾向が強いです。全体をまとめて管理する医者がいないのです。

 

一般的に心不全を循環器内科医が管理した場合、「βブロッカー」という薬を処方します。肺気腫を呼吸器内科医が管理する場合、「β刺激薬」を処方します。βブロッカーとβ刺激薬は効果が真逆の薬剤です。それぞれの病気を別の医者が管理すると作用が真逆の薬を同時に使用される危険性があります。もちろん他の科でどのような薬を処方しているのか全体を見渡せる医者であればこのようなことはしませんが。

 

なるべく一人の医者が全体を見渡す方がよい場合もあるのです。しかしホスピタリストとしての訓練を受けている医者は少ないです。総合医(ホスピタリスト)マインドをもった専門家を育てる必要がありますが多くの専門家は自分が得意とする臓器しか診たがりません。