医学・生物系の「基礎研究」とはある種の細胞や小動物を使って仮説に対する実験を行い、仮説を証明しようとするものです。それに対し「臨床研究」とは基礎研究で実証されたものが人間に対してもあてはまるのかを証明するためのものです。製薬会社が発売前の薬の安全性や有効性を証明するために人間に対して行う治験というものは臨床研究です。

 

治験は第一相試験から第三相試験まであり、第一相試験では健康成人にたいする安全性試験を少人数で行うものです。実際に人間に薬を投与して血中濃度や吸収・分布・代謝・排泄などをしらべます。被験者バイトの謝礼金は1週間で20万円ほどだそうです。もちろん副作用が出現するリスクはあります。

 

「基礎研究」で正しいとされたことが「臨床研究」では証明できなかったということはよくある話です。そのため私たち臨床医は「基礎研究」の結果より「臨床研究」の結果を重視します。

 

大阪大学の感染症科の忽那教授がコロナワクチン接種を呼びかけたことで、SNS上の中傷を受けたとして投稿者に損害賠償を求めました。判決では賠償金の支払いを認めています。

 

まさに基礎研究と臨床研究の違いを理解しているかということにつきます。基礎研究者がコロナワクチンは危険と発信しても「臨床研究」での有害性が証明されていなければ私たち臨床医は有害とは判断出来ません。この場合の「有害性」とは人間でコロナワクチンを接種したほうが接種しなかった場合に比べて死亡率が高い、重症化率が高いなどの臨床データが示されることです。決して「〇〇タンパクの数字が上昇する」などの検査データではありません。

 

臨床研究の解釈については「JAMA user's guide to the medical literature」という本にまとめられています。

 

以前のブログにも書きましたがiPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥先生は「科学的な真実は神のみぞ知る。科学者は真実に迫ろうと努力するけれどいくら頑張っても近づくことが精一杯。真理と思ったことが後から間違いであったということを繰り返している」と述べています。

 

そして国は、個人に対する有害性よりも社会全体に対する有益性が優る可能性を考えてワクチンを推奨するのは仕方がないことです。スペイン風邪のように死者が日本国内であふれかえることを懸念していたと思います。