肺の構造は肺胞を中心とした「肺実質」と、肺胞と肺胞の間にある壁を中心とした「間質」に分類されます。一般的な細菌性肺炎は肺実質を中心に炎症が起きるのですが、自己免疫やウイルス感染、薬剤、環境因子の他、原因不明の特発性により「間質性肺炎」が起こります。特発性(原因不明)というためには他の原因を除外しなければいけません。歌手の八代亜紀さんは自己免疫疾患の合併症である間質性肺炎で亡くなられました。

 

間質性肺炎の鑑別疾患には結核や、過敏性肺臓炎などと鑑別することが必要となります。

 

この特発性間質性肺炎はさらにいくつかの臨床病型に分類されます。①急性間質性肺炎 ②特発性肺線維症 ③剥離型間質性肺炎 ④呼吸細気管支炎-間質性肺炎 ⑤特発性器質化肺炎 ⑥非特異的間質性肺炎 ⑦リンパ球性間質性肺炎 ⑧分類不能型です。

 

臨床病型によりステロイド治療への反応性が異なります。

 

77歳の男性 1週間前からの労作時呼吸苦で来院されました。3週間前に感冒症状があったそうですが一旦改善し、その後労作時呼吸苦が出現しました。この症状の場合、まずは貧血、心疾患や肺疾患を想定します。発熱もなく食欲低下も認めません。関節痛や口腔内潰瘍などの自己免疫疾患を示唆する症状はありません。アレルギーの既往はなく、古い木造住宅に妻と二人暮らしです。(環境因子による「過敏性肺臓炎」の可能性も考えて病歴を聴取しています) かかりつけ医から複数の薬剤処方があります。

 

診察で結膜の貧血をチェックし、心不全がないか心音と頸静脈を確認します。肺の音を聴き、膠原病の所見がないか皮膚、関節、指先をチェックします。「機械工の手」や「ショールサイン」「ゴットロン徴候」「ヘリオトロープ疹」などの所見は膠原病を考えます。この患者さんにはありませんでした。頭の中にいくつかの病気を想定しながらその病気で出現する異常な所見が無いかを注意してみていきます。診察からは心疾患や貧血より肺疾患を疑いました。

 

胸部のCTを撮影したところ左右の肺に間質性の異常陰影(ところどころ実質の異常もあります)が全体的に認めます。4か月前に撮影されたレントゲンと比較しても増悪しています。やはり鑑別疾患として結核、過敏性肺臓炎、アスペルギルス肺炎の他に特発性の間質性肺炎を疑います。酸素飽和度は93%であり自分で歩行は可能です。上記の疾患を鑑別するために気管支鏡の検査が必要かもしれません。呼吸器内科の専門医がいる病院への相談が必要と考えました。

 

患者さんに説明します。「私は過敏性肺臓炎か間質性肺炎を疑っていますが診察を確定するために呼吸器内科の医師の診察が必要です。」紹介状を作成し、外来の予約を取り、受診してもらうことになりました。