日本で認可されているインフルエンザ薬は下記があります。

・オセルタミビル(タミフル)

・ラニナミビル吸入(イナビル)

・ザナミビル(リレンザ)

・ バロキサビル(ゾフルーザ)

・ ペラミビル注射(ラピアクタ注射)

 

インフルエンザ様疾患の成人患者(高齢者や慢性疾患の一部を含む)を対象としたメタアナリシスでは、早期に治療を開始すると、オセルタミビル(タミフル)で 16.8 時間、ザナミビル(リレンザ)で 14.4 時間、症状の改善が早まったという結果が出ています。発症後 48 時間以上経過している段階で治療を開始しても治療効果はほとんどないと判断されました。どちらの薬剤も2次性肺炎と入院を減少させませんでした。

 

ペラミビル(ラピアクタ)は唯一の点滴製剤です。罹病期間を約 1日短縮する効果があり、オセルタミビルと直接比較した研究では効果は同等でした。ただし高価でもあるため、内服が困難もしくは腸管吸収が低下している患者に限定して使用したほうがよさそうです。

 

ラニナミビル(イナビル)は米国では認可されていません。ラニナミビルはオセルタミビルとの非劣性試験で非劣性であるという結果が出ているのですが、プラセボと比較して優越というエビデンスがありません。それでも厚生労働省はインフルエンザ治療薬として認可しています。また、バロキサビル(ゾフルーザ)もオセルタミビルより効果が優れていることを臨床研究で示せていないため「使用を推奨しない」と判断している医療機関もあります。

 

「非劣性試験」と「優越性試験」の解釈を間違えると判断を誤ることになります。ですから臨床研究の患者さんへの適応を考える能力は重要なのです。

 

また暴露後予防投与(発症する前に薬剤を使用すること:PEP post-exposure prophylaxis)では添付文書上、

・高齢者(65歳以上)

・慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者

・代謝性疾患患者(糖尿病等)

・腎機能障害患者

と記載されています。これは漫然と薬剤を使用することを予防する目的だと思います。

 

米国のCDC(center for disease control)の抗インフルエンザ薬使用ガイドによると予防投与の適応は日本の添付文書とは異なっています。オセルタミビル(タミフル)は3か月以上の年齢なら誰でも使用可能で非推奨の条件はないとのことです。ザナミビル(リレンザ)は5歳以上で基礎に呼吸器疾患がある場合が禁忌です。ぺラミビル(ラピアクタ)は予防には推奨されていません。