83歳の男性

脊椎多発骨折で整形外科に入院中の患者さんについて整形外科主治医より診断の相談がありました。血液中のタンパク質は「アルブミン」と「グロブリン」に分けられますがこの患者さんの全タンパクが11.2g/dlありアルブミンは2.5g/dlしかありません。その差である8.7g/dlはグロブリンということになります。グロブリンがこれだけ大量に検出される病気は多発性骨髄腫です。多発性骨髄腫は血液の異常な形質細胞が増殖する病気です。俳優の佐野史郎さん、慶應大学教授の岸博幸さんがこの病気を公表しています。

 

一般的に多発性骨髄腫はCRABという頭文字の症状を起こします。Cは高カルシウム血症(calcemia)、Rは腎機能障害(renal)、Aは貧血(anemia)、Bは骨病変(bone lesion)です。この患者さんは骨病変のみです。

 

末梢の血液のタンパク電気泳動検査 免疫グロブリンの重鎖、免疫グロブリンの軽鎖(Κ/λ鎖)、尿中BJP検査を提出します。これらは多発性骨髄腫のスクリーニングに使用されます。診断の確定には骨髄検査が必要です。骨髄に異常形質細胞が10%異常あれば多発性骨髄腫の診断が確定します。

 

65歳以上では骨髄移植は行われません。ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、イキサゾミブなどの薬剤での治療が行われることになります。完治は難しいかもしれませんが症状をコントロールしながら日常生活を送れるようにすることが目標となります。