皆さんは札幌医大の「和田心臓移植事件」をご存知でしょうか? 1968年のことです。現在では脳死患者の臓器移植を進める法整備が整っており、条件が整えば脳死患者さんから臓器を移植することは可能です。しかし、脳死であっても心臓は動いています。和田移植時代、脳死は人の死と定義されておらず法整備も整っていなかったため日本では脳死患者さんから臓器を取り出せば殺人とみなされる可能性がありました。日本初の心臓移植という功名心から断行したのではないかと問題になりました。

 

昨日、「孤高のメス」という映画を見ました。原作は「メスよ、輝け」というタイトルです。映画の主役は堤真一です。あらすじは米国帰りの腕の良い外科医が地方の病院に赴任するところからはじまります。その小さな町で法整備も整っていない時代に脳死肝移植を行うという内容です。

 

私がこの映画で注目したのは、主役の当麻鉄彦(堤真一)ではありません。生瀬勝久演じる大学病院から派遣された医者です。地方の田舎に大学病院から派遣された医者の役なのですが、手術技術が悪く手術室という密室で患者さんやご家族に嘘の説明を行う役柄でした。

 

この映画をみるのは実は2回目なのですが、1回目にみた時「こんなひどい医者はあくまで映画の中だけだろう」と思っていました。自分の技量に合わない処置を断行する医者など、自分の周りで見たことがありません。あくまでドラマというフィクションですが、手術室という密室での事柄をうやむやにしようとする姿勢が赤穂市民病院事件、神戸徳洲会事件と重なりました。もしかすると赤穂や神戸徳洲会以外にもこのような医者はいるのかもしれないと思うと恐ろしく感じました。