腸チフスのメアリーさん

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料理人のメアリー・マローンという女性は腕のよい料理人でした。彼女は特に問題なく元気に料理人として働いていました。

 

アメリカで腸チフスの小規模な流行があったときに、原因を突き止めていた衛生士がメアリーさんの働いていた職場で腸チフス患者が出ていることに気付きました。メアリーさんを感染源と疑い彼女に説明しました。しかし、これを聞いたメアリーさんは激高し調査に協力しませんでした。そのため彼女は強制的に隔離され、尿や便のサンプルを取って検査されました。そして彼女の便からチフス菌が検出されたのでした。

 

メアリーさんは過去、一度もチフス菌による症状を発症したことはありませんでした。結果として彼女は細菌をばらまき感染源となる健康保菌者だったのです。それまでチフス菌が人間にたいし症状を引き起こさない不顕性感染を起こすことは知られていませんでした。

 

最終的にメアリーさんは(1)食品を扱う職業に就かないこと、(2)定期的に居住地を明らかにすることを条件に隔離を解除されました。

 

しかしメアリーさんはこの約束を破って再度料理人として働き始め、またチフス菌の流行を起こしてしまいました。そして最終的に死ぬまで施設に隔離されることとなりました。

 

その後チフスは胆嚢に保菌されることがわかりました。特に胆石を持っている場合に多いそうです。

 

本日の外来に、食品関係の職場の定期的便検査でチフス菌が陽性になったという保菌者が来院されました。胆嚢は手術で摘出されているそうです。この話を知っていたのでニューキノロン系の抗生剤で治療することとしました。治療後にチフス菌が便から消えているかの確認が必要です。

 

しかしこの方針については本当に治療が必要なのかどうかは専門家でも意見が分かれているようです。明確なガイドラインなどはありません。

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