Hit the floor 11 | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

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嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆





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― PM11:00 ―



両腕を取られたまま通り過ぎる№5のドア。


「オレ、用事か…」


呟く声なんて、まるっきりムシしてズンズン歩いていく。




…囚われた宇宙人的な?


右側の蝶タイは、笑ってんだか緊張してんだか、表情がクルクル変わってるし、

いきなり現れた左側の見覚えのある濃いのは、なんかニヤニヤしてるし…。


半年以上も前に一度だけ会った男。ほんとにサトシと関係あるのか?


「ねえ…」


尋ねようとした時、ピタリと足が止まった。


行き止まり。


右手にシンプルでスリムなドア。

多分バックヤードに繋がってるんだろう。


蝶タイが、ドアの上部、小さな隙間に胸ポケットから取り出したカードを差し込んだ。

横の赤い豆粒みたいな小さな光りが緑に変わって、ドアが開錠されたことを教える。


この船のスタッフではあることには間違いないようだけど。


「あんたたち、オレをどうする気?こんなことして、上の奴らが黙ってないよ」


中に入っても二人は無言で、スタスタと迷うことなく歩を進めてる。

トンネルのような通路、薄暗くて冷え冷えとしていて、船ってこともあんのか、両手をグルリと回したら、指先が届きそうなくらいに上が低くて幅が狭い。


どんなリッチなホテルだって、裏側はこんなもんなんだろうけど、

こんな狭い空間、男3人肩寄せ合って歩いてるって…。


「…オレ、単価高いよ? あんたらみたいな若い奴らには払えっこないと思うけど」


相変わらず独り言のオレ。


そして角を幾つか曲がって、表の客用のものと比べたら遥かに実用的な小さなエレベーターの前に辿りついた。

無言で背中を押され、オレの不安とイライラはピークに達した。


「なんか言えよ!お前ら、なんだよっ?」


足を踏ん張って、精一杯拒否る。


「離せってば…」

「あー、もう、ごちゃごちゃ、るっせーんだよっ!」


オレの声に被せるように濃いのが怒鳴った。


「お前、俺のこと忘れたってか? あんとき、ちゃんとジコショーカイしただろうがっ! あー?!」

「いっ、痛てて…」


腕を捩じられ、その強さに顔が歪む。


「もぉまたぁ、 もっと優しく出来ないの?」


蝶タイがその手を軽くクイッと払って、その手でそのまま上へのボタンを押す。


この蝶タイ、意外と強ぇ。


「だって、コイツがゴチャゴチャ…」

「コイツとか言わないの!大ちゃんの大事な人に」

「ってか、お前さ、ホントに俺ら大丈夫なんだろうな?さっき、海ン上、結構危なそうな巡視艇っぽいのがウヨウヨしてたけど」


「…やべ、まだ報告してない…」


蝶タイが、一瞬で青くなった。

表情豊かなヤツだな。


「ぅおいっ! 狙撃とかされたらどーすんだよっ!」


あ、こっちも青い。


「…やべやべ…」

「…マジかよ」


それにしても狙撃とか、何? なんか、ほんとに危険な匂いしてきた。。


ガタンと音がしてエレベーターが止まる。


「急がなきゃ」

「早いトコ済ませねぇと」


質素な箱から飛び出して、さっきと同じ型のドアを抜け、見慣れたゴージャスな空間に戻る。


…ほ、ほとんど、全力疾走、iい、息が、上がる


「ね、いい加減に、説明してよ。も、抵抗しないからさ」


抗うなんて、オレの選択肢にはない。

流れるまま、されるまま、汚されるまま。


そして、またドア抜けて…


そう、例え、この暗い海に突き落とされてしまおうが…って、


「はあ…!?」


いきなり目の前に広がった一面の闇、聞こえる波音、咽るような潮の香り、頬を刺す冷たい湿った海風。


終点は、船のてっぺんってか?


「なんだよ、ここ。 寒みぃよ、オレ、寒いの苦手なんだよ…」


「ほら、足元気を付けて、その階段降りて」


オレのボヤキなんて聞こえぬ振りの、場違いな優しい声が手を引く。


「とっとと行けよ。俺、まだやることあんだから」


楽しんでるような低い声が、肩を押す。


…もう、どうにでもしてくれ。


すっかり諦めたオレは、ゆっくりと足を踏み出した。

そして、強風によろめきながら狭い階段を降りてくオレの視界に入ってきたのは…


…ヘリ?

本物なんて間近で見たこと無いけど、あのシルエットはそうだよな。


夜の海、存在を示すために船の輪郭に沿って点滅してるライト。

闇と光が交錯する中、ヘリから誰かが飛び降りた。


まだ焦点が合わないままの視線の先、まるで古い映画のコマ送りのような奇妙な動きで、影がこっちに向かってくる。



…!?


瞬くストロボの中、コンマ1秒、目に映ったのは…


いや、まさかそんなこと…


「カズ!」


空耳?


「カズっ!」


…マ、ジ?


「こっちだ!」


「…サ、トシ?」


思わず差し伸ばす指先 爪先が宙に浮いて…


「あっ、危ない!」


蝶タイの手が、空を切った。


いけね、まだ、階段…あった。 


落ちる…


前に向いたままの目線が最後に捉えたのは、驚いたような笑ってるようなサトシの顔。


一瞬の無重力、直後に来る痛みを覚悟した体を、滑り込んだ力強い腕が受け止めた。


ふわりと気が遠くなる。


ああ この香りだ


微かなタバコの匂いと コロンが淡く混じった、甘い雄の香り 



サトシだ… サトシだ… 



夜ごと眠る前 ほんの少しずつ取り出していた香り

繰り返し辿った 手と指の名残り


大切な大切な宝物。

大事なモノなんてなんもないオレの、唯一の…。


でも どうせ夢だ


また 泣くだけだ


目が覚めたら 目尻がカピカピになっててさ


ちっぽけな体が たった一個あるだけでさ



「カズ、目ぇ開けろ」



…声? リアルな夢



「ニタニタ笑ってんじゃねーよ、とっとと起きろ」




ふふ… 息遣いまで感じる…



ちゅ…


!!!


ちゅっ、ぺろ…


末期症状だ…


「智くん、そんなことやってる場合じゃないだろっむかっ!!」


「だって、カズが起きねぇんだもん」


…?


「お、気が付いたか?」


「サ、ト、シ…?」


薄く目を開いたら、上から照らすライトの小さな輪の中、ぼんやり見えたサトシの顔。


指を伸ばして…


ホンモノだ…。


「カズッ!」

「サトシッ!」



瞬間、キツク抱き合う。

夢じゃ、ない。


サトシ、サトシ…

カズ…


「翔ちゃん、鍵、返して」

「あ、うん、あれ? 松本は?」

「あれ、さっきまでいたのに」

「どこ行ったんだよ。アイツいないと飛べないだろ」

「なんか、やることあるって言ってたけど」


頭の上で現実的な会話が交わされてる。


「智くん! 電話してよ!」

「うわ、もう20分、大ちゃん、早く!」


「……サトシ」

「カズ、カズ…」

再会の喜びを味わってる最中だけど、


「智くん!!」

「大ちゃん!!」


モゾモゾ、やらしい手つきで背中、触ってくるけど、


「あの、呼ばれてる…」

「!!ああもぉっ! うるせぇなっ!!」



首筋にスリスリしてたサトシが顔を上げて、ふくれっ面で怒鳴った。


「んなことやってる場合じゃ無いって!! 早く松本呼んでってば!」


ライトがブンブン揺れて、もっと大声が返って来た。


bububu…


「あ、やべ、松岡さんだ」


蝶タイが慌てて電話に出る。



「もしもし、はい、わかってます! 大丈夫です! え? ダ、ダメです。民間人です。狙撃なんて…、冗談でもそんなこと言わないでください!!」




「そ、狙撃…?」





ライトの顔が引き攣った。












つづく。