空へ、望む未来へ (74) | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

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嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆


階段を降りていた翔に爆音が聞こえた。ドアが叩きつけられ、熱風が背中に当たる。

「お父さん…?」

「翔! だめだ!」

身を翻して戻ろうとした翔を修が引き戻す。

「離して!」

翔はその手を振り切って階段を駆け上がった。


 熱い風が渦巻く中、翔の前に惨状が広がる。燃料が全て流れ出ていたため、ヘリ自体は爆発していないが、その機体は炎に包まれ、ドアとプロペラの一部が弾け飛んでいた。胸を焼く様な異臭が漂い、熱風が渦となって翔の体を包む。

「あ、ああ、なんてこと…」

ふらふらと歩く翔の目が、尾翼の下に横たわる宗吾の姿を捉えた。千切れたプロペラがそばに落ちている。

「お父さんっ!」

走り寄った翔の顔が強張った。
火傷はそれほどひどくはないようだが、大きな金属片が腹部に刺さり、手足は不自然な形にねじ曲がっている。瀕死の重傷である事は一目瞭然だった。

「お父さ…ん?」

血の海に膝まづき、そっと体に触れる。声にならない嗚咽がもれる。涙が溢れる。

「お父さん!」

涙声で呼び掛ける。
「…しょ、う」

宗吾がうっすらと目を開けた。

「すぐ、先生を呼ぶから、しっかりして!」

翔の涙が落ち、宗吾の頬を濡らす。

「…あの時も、私の涙が、美紀の頬を濡らしていた」

「しゃべらないで!」

「最後に、お前を頼むと、そして、無理をするなと、そう言って死んで行った」

「いいから、黙って」

「私は…、くやしさと、怒りに塗れていた。でも、不思議だ。今、とても穏やかだ」

修も駆けつけた。

「会長!」

「笹川…、結局はお前の思い通りになる。私は、さっき、お前の問いに答えられない自分に驚いた…。美紀が死んだ時と同じ、絶望を感じた…」

「お黙りください。すぐ、止血します」

ハンカチを取り出し、傷口に当てる。
「ひとつ、話しておく。よい、止血など、もう無駄だ…」

話すたびに腹部から血が溢れ出る。

「お父さん、動かないで!」

翔も必死に手のひらで傷口を押さえる。

「もう、よいと言っている。大事な事だ、よく聞くのだ」

声がかすれ、よく聞き取れない。二人は宗吾の口に耳を寄せた。

「…あの、女子大生を殺したのは、お前ではない」

「…え?」

「…それは、どういう?」

宗吾は、ふーっと一つ息を吐いた。それと共に残り少ない生気も出ていったかのように体が痙攣した。

「お父さん!」

「会長!」

浅く息を吸い、最後の力を振り絞るように、宗吾は続けた。

「…翔が去ったあと、彼女は息を吹き返した。だが、その時、翔のガードに当たっていた…、魁が、最後の手を下した」

修は驚愕した。

「…あ、兄貴が?」

修は瀕死の宗吾を、思わず強く見据えた。

「あなたの、命令ですか?」

宗吾は微かに首を振った。

「いや、違う、奴は、お前が後始末をしなくて済むようにと、自らやったのだ。お前の手を汚したく無かったのだろう」

翔が、信じられないと首を振る。
「嘘だ、僕だ、僕が…」

混乱て、声が震えている。

「…今わの際に、嘘を言う必要は無かろう…」

修も混乱していた。

「兄貴が…? そんな…、バカなことを…。俺がそんな事をするわけがないのに」

宗吾がひと際大きく震えた。

「お父さん! お父さん!」

「しょ、う、認めたくは、なかったが、おまえに対しては、捨てたはずのものが、きっと、あったのだろう。だから、おまえを、しばり、つけていたかった…。でも、もう…、終わりだ、解放すると、しよう」

苦痛にゆがんでいた表情が、ふっと和らいだ。

「ようやく、あいつの元に行ける。ずっと…、この日を、待っていたような気がする。やっと、やっとだ…」

宗吾の目の奥の光がすうっと消えた。


翔の腕の中、その顔には確かに小さな笑みが浮かんでいた。








続く。









☆☆☆なんと、次回が最終話です。6日0:00にUPします。

長いこと、読んでくださって、ありがとうございます。

なーんて、まだ、ご挨拶にはちょっと早いね。

あと、一話、おつきあいくださいね♡☆☆☆