実は二人は同じ2を書いていく。


本当はアスランとミーアの続きを書いていこうと思っていたが、それはまた別で書きたいため、こちらを本日は書いていくことにする。



第31話である。


シンはステラを勝手に返してしまったため、逮捕、拘束されることとなった。罪状は以下である。


グラディス艦長「勝手な捕虜の解放、クルーへの暴行、モビルスーツの無許可発進、敵軍との接触。こんなバカげた軍規違反、聞いたこともないわ!」

地球軍と戦争をしているというのに、その地球軍の捕虜を勝手に返したら銃殺刑であることは、前作SEEDでキラがラクスを返したあとに行われた簡易的な軍事裁判で説明されている。あの時のキラはまだ軍人ではなかったために罪に問われることはなかったが、シンは正規の軍人である。間違いなく銃殺刑は免れない。しかも、その捕虜をジブラルタルに連れてくるよう命令を受けていたために、グラディス艦長は司令部に報告せざるを得ないと厳しく言いつけるのだ。処分が決定するまでの間、シンは営倉入りを命じられることとなってしまう。


グラディス艦長「普通に考えれば銃殺だけど、シンのこれまでの功績を考慮してくれれば…それだけは…」


グラディス艦長のこのセリフから、報告と同時に考慮していただけるようお願いをしたと推測できる。

そして決定したのがこれである。


アーサー「拘束中のエクステンデッドが逃亡の末死亡したことは遺憾であるが、貴艦のこれまでの功績と現在の戦況を鑑み、本件については不問に付す。えぇっ!?一体これは、どういうことですか!?」

「逃亡の末死亡した」と事実を変えてしまった上に、あれだけの軍規違反を犯した者に何のペナルティを与えることなく、不問に付す。


シンが不問にされたのは、シンは何もしていないとされたからである。つまり、シンのしたことはなかったことにされてしまったのである。


到底あり得ない決定に、グラディス艦長やアーサーをはじめとしたミネルバ艦内の者たちは、驚きと困惑を隠せない。


「不問だって?」、「えっ、ウソ!?あれで!?」、「司令部が?」、「やっぱスーパーエースだもんな」

これでは軍規などあってないようなものである。明らかに考慮の範疇を越えているからだ。ものすごい特別扱いである。


シンが戻ってくると、ヴィーノは無邪気に喜ぶ。

ここでアスランは、初めて自らが所属する組織や司令部に疑念を抱くこととなる。


あれだけの軍規違反を犯したにも関わらず不問にされ、何事もなかったかのように軍に戻る、いることが許されるシン。到底あり得ない決定を司令部が下す。


あまりに異常な決定に、「あれだけのことをしているのに全て不問?本来なら何事もなかったかのように軍に戻れるわけがない。これは絶対におかしい!」と。

だが、それはそのままそっくりアスランにも同じことが言えるのである。今目の前にいるシンは、正にアスランである。


アスランも命令違反、重要機密であるモビルスーツを持ち逃げしたままの脱走、敵対行為と罪を犯した身である。特にアスランは、軍を脱走しているのである。その罪が重いというのは、マリューさんが偽名を使って隠棲していたことからわかることである。(アスラン自身も)


そのような人間が何事もなかったかのように脱走したザフト軍にいる。戻ることが許されている。


おかしいのである。


一度脱走した人間が、何の処罰も刑も受けることなく全てをチャラにされて何事もなかったかのようにザフト軍にいるというのは。


それも厚遇で、である。ものすごい特別扱いである。


本来なら戻れるわけがないのだ。今手にしているものも含め、到底あり得ないことである。だから「幻」であり、議長の見せている偽りの夢なのだ。


シン「司令部にも、俺のことわかってくれる人はいるみたいです」

俺のことわかってくれたと盛大に勘違いするのも同じである。アスランもそうだっただろう。それで鼻高々となっていたのだから。


何でも許し、咎めない。これが「良い人」であり、認めるということなのか?理解者なのか?


こんな甘い言葉ばかり言ったり何でも許す人は、良い人でも優しい人でも何でもないのである。本当にわかってくれている人というのは、褒めるばかりでなく、時にしっかりと諌めてくれる人のことを言うのだ。


実際、議長は「わかって」るわけではない。

二人は同じ。


シンが正しいと議長が認めてしまったため、グラディス艦長やアスランはシンに対して強く言ったり、押さえつけることができなくなってしまった。


もしキラとカガリが現れなければ、アスランもずっと気持ちよく戦っていたはずである。自分が何をしているか見つめ直すこともなく、迷うこともなく、何も考えることなく力を振るい、ひたすら戦い続けていたはずである。


目の前の甘いエサにつられて切ってしまう。切ってはいけないものを。


自分が正しい!とする姿。己の浅はかさ。自分は正しく何かなかった。アスランは認められなかった。シンはどうか?このあとを観ればわかること。認めないのである。


議長にとって二人は有用な手駒でしかないのだ。(が、この時点でそれがシンに変わる)踊らされている点もそのままそっくり当てはまる。営倉でアスランがシンに言ったことは、25話でキラがアスランに言ったことと近い。言われているシンはもちろん、諭すアスランもそれに気付かない。哀れである。



シンに向けられた驚きと困惑は、アスラン自身にも向けられたものと同じである。


だが、アスランに対してはそれだけではなかったのである。


カガリやキラを含めた周囲の人間の目に、アスランは一体どう映っていたのか。次回はそこを書いていく。