アスランは戦争そのものだとする解説でございます。




ー相容れない両者ー


第24話でアークエンジェルの行方を探すために、アスランはグラディス艦長に許可を求めます。ここ、前作SEEDの42話で、父パトリックに会いにいった時と一緒です。自分ならば父を止められる、考えを変えられる、間違いを正せる。それができるのは自分だけ、と。あの時と同じで、そういう確信を持ってアスランはキラとカガリに会いに行くのです。


両者が再会し、カガリは飛び出してこう言います。


カガリ「どういうことだ!?アスラン、お前 !?ずっと、ずっと心配していたんだぞ!」


次、パトリック。


パトリック「どういうことだ!?何があった!?ジャスティスは!?フリーダムはどうした!?」


アスランに対して「どういうことだ!?」と詰め寄っている点も、前作SEEDの42話と同じなのです。大きく違う点は、アスランを心配していたかどうかでしょう。少しも気にかけない冷徹なパトリックと、ずっと心配して気にかけていたカガリ。そのあとのアスランが怒鳴り返すところは、もう完全にパトリックそのものです。理解も歩み寄りもない、違う考え、違う価値観を持つ者を認めない、相手の思いに気を留めない、思いやることをしない、そしてー。


またザフトで、ずっと連合と戦っていくの?とキラは問います。


アスラン「終わるまでは、しかたない」


これを聞いたカガリは、愕然、ショック、凍りつく、そういう表情になります。

このカガリのリアクションは前作SEEDの42話で、パトリックのあの発言を聞いたアスランと、全く同じなのです。

となると、アスランの言う「終わるまで」というのは、「ナチュラルどもが全て滅びれば、戦争は終わる!」と言ったパトリックと同じであり、敵であるものを全て滅ぼすまでずっと戦い続けると言っていることと同義なのです。


そしてこのあと、アスランは連合の非道をやめさせなくちゃならないんだ!と苛立ちを露に声を荒げます。これは、「プラントは正義で悪は連合」と言っているのです。その路線でいってしまうと、連合を殲滅すれば平和になるということになり、パトリックやアズラエル、連合のやり方こそが正しいになってしまうのです。何とか言葉を尽くすキラは、前作SEEDの42話でパトリックに言葉を尽くしていたアスラン自身です。今自分が何を言い、何をしようとしているのか、アスランはわかっていないのです。何も考えていないからです。


もうアスランの中では正義はプラント(ザフト)、であり、悪は連合、それに与したオーブも悪で敵とする図式になってしまっています。非道を行う連合許さねぇ、全てやっつけてやる!と怒りに置き換えられ、殺る気マンマンです。


キラとカガリの目に、アスランはどう映っていたのか。(これ、今度解説します)


武器、兵器の介在しない平和的解決が見られない、全て連合が悪いから終わらせるためには戦うしかないという大義を掲げていても、その戦い方や考えが連合と何も変わらないため、行く着く先は先の大戦と同じで殲滅戦争という泥沼です。(それはDestinyの30話でキラが言っています)


自分たちが正しい!悪の連合相手に殲滅するまで戦う「戦争の当事者アスラン」と、それでは待ち受けているのは殲滅戦争という泥沼であり、いつまでも戦いは終わらない、平和にならない、全てが死に絶えた世界になってしまうことがわかっている「戦争の経験者であるキラたち」。


信じているもの、考え方の違い、立場の違いからお互いは相容れることはなく、物別れに終わってしまいます。完全にキラたちとアスランは、立場も行く道も違えてしまいました。


相手の話を聞こうともせずに自分の言いたいことだけを言うところも含めて、ここまででもアスランは完全に戦争そのものなのですが、もう少し解説しましょう。



ーアスランは戦争そのものー


アスランの言っていることが正論とか、どっちが間違っていて、どっちが正しいとか、そういうのはここでは消し飛ばして下さい。邪魔でしかないからです。見てほしいのは、「構図」なのです。


「戦闘を止めたい、オーブを戦わせたくないというんなら、まず連合との条約から何とかしろ!戦場に出てからじゃ遅いんだ!」、「あんなことはもう止めて、オーブへ戻れ。いいな!」

などなど、アスランはキラやカガリの事情を鑑みることなく、一方的にああしろこうしろと要求します。


つまりはこうです。


自分の立場や主張は一切譲りません。話を聞きません。相手を認めません。相手への理解、歩み寄り、譲歩、妥協、一切ありません。それでいて相手側にばかり要求します。


その要求が通らないと、アスランの思考ルーチンはこうなります。


俺は言った→でもお前たちは聞かない→聞かないお前たちが悪い→排除


セリフにするとこうです。


俺は言った!なのにお前たちは聞かない!なら、戦うしかないじゃないか!←アスランの超十八番


そうやって、すぐに「しかたがない」と言って戦ってしまうのです。


これは一方的な要求と、される者。その構図。


一方的な要求をし、それが聞き入れられなければ撃つまで!とこれまでやってきた連合とアスラン、先述したことも含めてどう違いますか?


違い何てありません。


根本の部分は全く同じなのですから。


もっと詳しく知りたい場合は、36話を観ましょう。(このシーンも今度詳しく解説しますね)


アスラン「これは、これからロゴスと戦っていくために、ということですか?戦争をなくすためにロゴスと戦うと、議長は仰いました」

アスランが言っているのは、ロゴス相手に戦争する気ですか?ということです。すると、デュランダル議長はこう答えます。


デュランダル議長「戦いを終わらせるために戦うというのも、矛盾した困った話だが。だがしかたないだろう?彼らは言葉を聞かないのだから。それでは戦うしかなくなる」

これ、25話でアスランがキラとカガリに言ったことと全く同じです。


連合が悪いのだから戦うしかないだろ。アスランもそう言ったのです。


自分の言ったことがそのままそっくり返ってきてしまったために、アスランは返す言葉がなく、言葉に詰まってしまうのです。

聞かないから撃つ。悪いから撃つ。敵だから撃つ。自分の言ったこと、自分のやってきたこと、やろうとしていたことが、父パトリックや連合と同じだったということに、アスランはここでようやく気づくことになるのです。


しかたがない、しかたがない。これはアスランの得意とする言い訳です。


相手が悪いのだからしかたがない。殺すのもしかたがない。こちらの言うことを聞かないのだからしかたがない。


平和何て言葉や大義を掲げ、「平和のために」と手に武器を持って人を排除する。こんなのをやる奴は平和主義者でも何でもなく、平和を騙っているというのです。


議長はわかっていて言っていますが、アスランの場合は本気で言っているからタチが悪いのです。


自分の考えや行動を全く疑わない、相手の話を全く聞かない、譲歩や歩み寄り、理解、一切ない。そしてすぐにしかたがないと言って排除する。


だから、終わらせるためにはしかたないだろと言われてしまうと、アスランは何も言えないのです。相手にどれだけ言葉を尽くし、譲歩し合ったのですか?などといった言葉は口から出ることはないのです。


戦いは最終手段です。それを回避するために話し合いをし、歩み寄り、理解し合い、鑑み、譲歩や妥協をするのです。そういうことをせずに一方的な要求をし、それが聞き入れられないと見るやすぐに武器を手にして人を排除する何て、平和的解決でも何でもありません。


一部どころか、アスランは戦争そのものでした。それがよくわかる場面となっています。(同時に議長もね)だから、キラはアスランの「敵」になったのです。


次回は予定を変更して、そこを詳しく書いていきます。