ユウナの本性、ユウナたち首長や閣僚たちの正体を解説した次は、カガリの問題点を解説していきます。
※なっがいです!お時間のある時にどうぞ。
まずは23話の冒頭からいきましょう。
ー事実を突きつけるー
オーブが軍を派兵。この知らせを聞いたカガリの様子はこうです。
カガリ「オーブが、スエズに軍を派遣?そんな…ウナトは、首長会は一体何を…?」
衝撃を受け、信じられないといった様子です。そんなカガリに向けるみんなの目が痛いです。
これが物語っているのは、「こうなることを分かっていなかったのはカガリだけ」ということです。カガリは手紙にも書いていました。同盟を結ぶにも関わらず、「この先オーブがどうなっていくかわからない」と。
全てわかった上でちゃんと考えて締結したのではなく、ユウナたちに差し出されるがまま、言われるがままに認めてしまったということがよくわかりますね。15話でキラが言ったことが、現実のものとなってしまったのです。
信じられないと狼狽えるカガリに、バルトフェルドがハッキリと言います。
バルトフェルド「だが、しかたなかろう?同盟を結ぶということは、そういうことだ」
カガリは言葉を失います。そこにキラが続きます。
キラ「そして、それを認めちゃったのは、カガリでしょ?」
非常に冷ややかです。腕を組んで階段にもたれながら言っているところから、呆れも含まれていると言えます。
キラ「こうなるとは、思ってなかった?」
カガリ「わ、私は…」
反論できるわけがありません。ちゃんと考えてのことではないからです。この狼狽えっぷりから、「こうなるとは思っていなかった」何よりの証拠です。カガリは本当にどうなるかわからないまま、ユウナたちの言っていたことを真に受けて認めてしまったわけです。
マリューさん「そう言わないの。私たちだって、あの時強引にカガリさんを連れてきちゃって。彼女がオーブにいたら、こんなことにだけはならなかったかもしれないのよ?」
カガリがしたことはこういうことだと事実を突きつけるキラに対し、マリューさんはそれは自分たちにも責任があると庇います。慰めとも言います。8話でカガリ一人が戻ったところで事態は好転しないというセリフがあったことからも、本心はキラと同じです。このセリフは本当に慰めでしかありません。
あともう一つおもしろいのが、アスランもマリューさんと同じことを言っている点ですね。カガリ個人に目を向ければ、その通りなのです。しかし、それは本当にちゃんと全てわかった上でのことか?というと、NOです。実際「何も分かっていない」わけですから。マリューさんとアスランでは、その根拠が違います。
キラ「いえ、同じことだったと思いますよ。あの時のカガリに、これが止められたとは思えない」
アスランは、カガリがいたらこんなことにだけはならなかった。キラは、カガリがいても止められなかった。
「あの時のカガリ」をアスランは知りません。さらに言えば、オーブやカガリの正確な状況さえも分かっていませんから、アスランの持ち得ている情報があまりに少なく、また、認識が非常に薄く、甘いことがわかります。これが、両者の「すれ違い」に拍車をかけることになるわけです。
このブログを読んでくださっている皆様は、キラに完全同意のはずです。「あの時のカガリ」はユウナたちに何も言えない、何も逆らえない、何も拒否できない状態で、自ら動こうとする気力も意志もなく、完全な言いなり…隷属となっていました。よって、これはキラの言う通りで、カガリがあのままオーブにいても止めることは絶対に無理でした。そもそも、12話でのユウナの勝手な行動を止められもしなかったのですから、キラの言っていることが紛れもなく正解なのです。
キラたちが強引に連れてこなかったらカガリはずっとユウナ(たち)の隷属として、敷かれたレールを何を言われても逆らえずに歩かされていたのです。連れ出し、「それは間違っている」と言ってくれ、カガリのしたことはこういうことなのだと事実を突きつけてくれたからこそ、カガリは自身の過ちに気づくことが出来たのです。間違ったことを間違っていると言ってくれる存在がいたことが、カガリが失った意志や行動力を取り戻させることになったのです。
バルトフェルド「だが、どうする?これを。オーブがその力を持って連合の陣営についたとなると、また色々と変わるだろうな。バランスが」
オーブの平和のみを望んで理念と法を捨て、他国に従う。そのために同盟を結ぶ。結果、キラが言ったようにオーブは他国の争いに介入し、他国を焼く国となってしまいました。自分のしてしまったことがどれだけのことか、カガリは強く痛感します。そして、この戦いを止めたいと言い、キラに出撃してくれるよう頼むのです。が、このカガリの呼びかけは失敗に終わります。
軍を派遣し、艦隊を展開しているわけですから、それを撤退させるには相応の理由を必要とします。それに、ここで撤退したら背信行為とみなされますので、カガリの言っていることがどれだけ無茶な要求かお分かり頂けるかと思います。
カガリもいい加減、学んでいかなければなりません。
「自分の思った通りになる世界など、ありはしない」のだということを。そういったことも含めて考えの甘さを痛感させる。こうなることがわかっていながら出したキラは、カガリの成長のために止めなかったと言えます。いちいち言葉で言うより経験させた方が早いし、学ぶからです。
ー強く深く刺し貫いた言葉ー
吹き上がる黒煙。燃え上がる炎。失われていく命。これは自分の過ちの結果。その過ちの結果を見つめるカガリの脳裏に、父ウズミ様が国民へ呼びかけている姿がよみがえります。
ウズミ様「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。我らオーブがこれを理念とし、様々に移り変わっていく長い時の中でも、それを頑なに守り抜いてきたのは、それこそ、我々が国という集団を形成して暮らしていくにあたり、最も基本的で大切なことと考えるからです。今、この状況下にあっても、私はそれを正しいと考えます。
地球軍の軍門に降れば、確かに今武力による侵攻は避けられるかもしれません。しかし、それは何より大切なオーブの精神への、いや、人としての精神への侵略を許すことになるでしょう。
今陣営を定めねば撃つという地球軍。しかし、我々はやっぱり、それに従うことはできません。今従ってしまえば、やがてくるいつの日か、我々はただ彼らの示すものを敵として、命じられるままにそれと戦う国となるでしょう。侵略を許さず!これはオーブの理念です。我々はこれを守るべく、最後まで努力を続けます!」
カガリの胸を強く、深く刺し貫いた言葉は、最後の赤太字の一言です。それはそれは、もう強く深く、グッサリと刺し貫きました。
ここで皆さんに質問します。
カガリは、最後まで努力を続けましたか?
「続けた」とお答えになった方に質問します。
カガリ「もうしょうがないんだ!ユウナやウナトや、首長たちの言う通り、オーブは再び国を焼くわけに何かいかない!そのためには、これしか道はないじゃないか!」
なら、このカガリの言葉をどう説明しますか?
前々回の記事で、僕はツッコミたくてしかたがないセリフと書きました。その理由を書いていきます。
カガリは最後まで努力を続けてはいません。だって、本人が言ってしまっているじゃないですか。「もうしょうがないんだ!」って。「これしか道はないじゃないか!」って。これ、「諦めてしまった人間の言う言葉」です。最後まで努力を続けた人間は、「もうしょうがないんだ!」何て言いません。
カガリは諦めてしまったのです。諦めたということは、努力をやめてしまったということです。これしか道はないじゃないか!って、本当にこれしか道はなかったの?もっとツッコミましょうか?
あなたたち為政者は、何のためにいるのですか?
同盟を結ばなければ国は守れない、国を焼かないためには同盟を結ぶしかない。
これを言っている時点でおかしいのですよ。
あなたたち為政者は何のためにいるのですか?何のための理念で、何のために軍があるのですか?何でも屋ですか?コレクションですか?アスハ代表、お答え下さいと言ったら、アスハ代表は何てお答えになるでしょうね?
同盟を結ばなければ国は守れない、国を焼かないためには同盟を結ぶしかない。
そうならないために、あなたたち為政者がいるのではないのですか?
戦端を開かないように最後まで外交努力を続け、戦闘回避するために道を模索し続ける。国や国民を守るために、世界や侵略者から守るために、そういう事態にならぬように守ろうとするのが「為政者」なのです。
同盟を結ばなければ国は守れないと言っているのは、自分たちの為政者としての責務や努力を放棄していることと同じです。
これしか道はないって、お前ら働けよって話しです。自分たちの国の守りを他国に依存して任せて何もしない。
自分たちの国なのだから、自分たちで守れよ!そのための理念であり、軍でしょう!?
そう思いませんか?
侵略を許さず!なのでしょう?なら、戦いなさいよって。
11話の閣議において、カガリは何の対案も出せないから無能人間と以前よく言われました。検索ワードを見ていても、ちょいちょいあります。カガリは「中立の道を行く」と言っていますので、対案が出せないことが問題なのではありません。
自分たちの国は自分たちで守る!という気概や戦いへの覚悟がないことが問題なのです。
これはカガリだけではありません。ユウナたちをはじめとした全員が、気概や覚悟が全くないのです。口を開けば同盟同盟って、全然外交努力をしようともしませんし、戦う覚悟も全くありません。
ユウナたちに国を守る気概や覚悟何てないのは結婚式に介入してきたフリーダムを前にして全員が真っ先に逃げ出したのを見れば、明らかです。そもそも売国奴に気概や覚悟何てあるわけがありません。なので、ここではカガリだけを見ていきます。
ーキラとカガリの違いー
カガリは、最初から戦うな、戦いはいけない、何でだよ、やめろと言い続けています。実はこれ、前作SEEDでのテーマでもあります。Destinyはそれに対し、戦うことはいけないことなのですか?をテーマにしていますので、そりゃSEED組(アスラン除く)は苦労します。
キラとカガリは「非戦を掲げている」という点では同じです。しかし、二人には決定的な違いがあるのです。
13話で、キラたちの住む邸宅はコーディネイターの特殊部隊に襲撃されます。これは、自分たちの目前に危機が、脅威が迫っているということです。ここで、キラはフリーダムに乗って戦うことを決めます。
このキラの選択や行動は、至極当然のことです。自分たちが住む家に侵入されたら、その襲撃者という脅威から守ろうとするのは人として当然のことだからです。
戦いたくはないけど、みんなを守るためならキラは戦うわけです。
前作SEEDで、キラはこう言っています。
キラ「勝ち目がないから戦うのやめて、言いなりになるって、そんなことできないでしょ?大切なのは、何のために戦うかで。だから、僕も行くんだ。本当は戦いたく何てないけど、戦わなきゃ守れないものもあるから」
本心は戦いたく何てない。けど、戦うべき時には戦わなければならない時もあるのです。戦争はイヤですが、でも戦いがイヤだからといって何でも言いなりや、されるがままにはできないのです。キラにはその戦いへの覚悟がありました。フリーダムに再び乗る時も、すぐに覚悟が固まりました。一度固めた覚悟を再び固めるのに、キラには時間は不要だったのです。
では、カガリはどうでしょうか?
戦うな、戦いはいけない、戦いはイヤだ、やめろ、そればっかりです。11話の閣議の様子からも、カガリからは国を守るために戦う覚悟や気概を全く感じません。繰り返しますが、対案が出せないことが問題なのではなく、守るために戦う覚悟や気概がないことが問題なのです。
これ、どういうことかと言いますと、戦いはいけません、どんな理由があっても戦ってはいけません、この考えがいき過ぎてしまっているということです。
じゃああなたは、戦いがイヤだから、どんなにイヤなことでも言われるがままで、されるがままなんですね?
その結果が、Destinyのカガリなのです。戦いはいけません、どんな理由があっても戦ってはいけません…この考えがいき過ぎてしまうと、何もできないのです。だから、戦場に出てきても「やめろ!」、「ダメだ!」、「戦うな!」と言うばかりで、何もできないのです。
カガリ「オーブは、何より望みたいのは平和だが、だがそれは、自由、自立での中でのことだ!屈服や従属は選べない!」(45話)
屈服や従属、自由か。この二択を迫られたら、誰だって戦うのではないでしょうか?正に覚悟の問題です。
カガリには、この覚悟や気概がありませんでした。戦いを選びませんでした。だから、言いなりになってしまったのです。
キラとカガリの違いは戦いへの覚悟であり、戦うべき時には戦わなければならない時もあるのだ、何のために戦うのかということをしっかりと理解しているかどうかです。そして、自分たちで守る!その気概があるかどうかです。
キラとカガリは、そこが決定的に違うのです。
ーまだある問題点ー
国のために同盟を結ぶ。その相手は二年前に攻めてきた大西洋連邦。そんな国との同盟なのですから、「何か裏があるのでは?」と思えなかったことがカガリの最大の敗因です。
二年前に攻めてきた国との同盟なのですから、怪しまないといけません。明らかにおかしいのですから。二年前に攻めてきたような国を信じて同盟を結ぶ何て、それこそバカなことです。到底あり得ないです。皆さんだったら信じられますか?近所の人が自宅に強盗に入って、物を壊し、家族を傷つけたとしましょう。そんな人が二年後、仲良くやっていきましょうと言ってきたら、あなたは信じることができますか?その手を取れますか?それと全く同じことです。
ユニウスセブン落下にしてもプラントと交渉するという外交も何もせず、自分たちで国を守るといった気概もなく、戦う覚悟もなく、何の仕事も努力もしないであっさりと理念を捨てた為政者たち。国は焼きたくない、戦いもしたくない、シンのような子をもう出したくない、だから同盟を結ぶ。結べばその望みが全て叶う。そんなウマイ話しがあってたまるか。
つまりカガリは、努力せずに楽して望みが叶うという安楽な方向へ流されてしまったということです。
その代償は、あまりに大きいものでした。
諦めて安楽な方向へ行く。諦めて努力を放棄する。自分たちで国を守らず、大国におもねって国を守る。その結果、オーブはウズミ様の言った通りの彼らの示すものを敵とし、命じられるままに戦う国となってしまいました。同盟を結べばこうなることはわかっていたのです。それは絶対に認められない。だから、断固として戦う。ウズミ様の決断は何も間違っていません。為政者が…それも国の代表が自らの望みのために努力することを放棄して諦めたら、いいように使われる運命です。
カガリのたった一度の過ち。
オーブに何の益もない戦いに出し、そのオーブから遠く離れた地で犠牲になってゆくオーブ軍の兵士たち。それを見ていることしか出来ないカガリの心は、身を切られるほどの痛みと苦しみです。強い後悔と自責の念に苛まれるカガリの目からは、止めどなく涙が溢れてきます。過ぎた時間は戻らない。失われた命も戻らない。残酷な23話です。
が、自らの過ちを認め、すぐにでも正そうとする性格や姿勢、過ちから目を背けずに受けとめることの出来る強さはカガリの美点です。カガリの持つ本質的な強さとも言えます。国や国民を想う気持ちは誰よりも強いところも。問題点や未熟なところだけでなく、美点もしっかり描かれているところがいいですね。
そして、もう一つのカガリの問題点は、「真っ直ぐな性格」です。
物事(や人)に正面からぶつかって解決していくのは良いところなのですが、為政者となったらそれだけではやっていけません。例えば11話。閣議で正論ばかりを言うでしょう?でも、その正論が通らないわけです。にも関わらず、カガリはずっと正論を言い続けるのです。正論が通らない、通じない人間も世の中にはいるのです。そこに気付けない真っ直ぐな性格がダメなのです。この23話も同じです。直球だけではやっていけない世界だということは、学ばないといけないのです。
真っ直ぐ体当たりも良いですが、政治の世界は小汚ないことも覚えなければなりません。カガリはそれに気付き、学ばないといけないのです。
人の上に立つ人間として、カガリは必要な経験をしています。「挫折と失敗」という。これを経験しているかどうかは、非常に大きいです。挫折や失敗の経験が一切ない人間が人の上に立つ姿を想像してご覧なさい。非常に恐ろしいことですよ。
こういった経験があるから40話のカガリがあり、45話でのカガリの演説があり、48話でオーブの理念、何としても守り抜く!という言葉が出てくるのです。全て、カガリが身を持って学んだからこそです。人は経験から学ぶということです。こういった経験がないのが、議長のデスティニープランです。
次回は12話のミネルバ献上と、23話でオーブ側はどう判断すればよかったのかを解説します。
続きます。
○23話は作画がキレイで良いですね。でも、きっついです。あんなバカのために犠牲になってゆくオーブの兵士さんたちがね…。それを自責と後悔の念に苛まれながら悲しみ、涙を流しながら見ているカガリの心中を思うと、本当にきっついです。でも、こうなる予感って序盤からしていたのですよ。
5話でカガリがシンにガーッと言われてしまうじゃない?それに対してさ、カガリはたじろいでしまって何も答えられなかったでしょう?それを見てね、あー…ウズミ様の選択の正当性を答えられないのかぁ…とイヤな予感はここでしてしまったのです。そうしたら案の定、閣議でも正当性を主張できずで…。だから、なるべくしてなったのかなって思いますね。やたらと力や戦いを否定しているのも気になってはいましたが、こうやって問題点を細かく描いてくれるDestinyという作品が大好きです!先ほども述べましたが、美点もしっかりと描いているところがもうたまらないですね!カガリの美点はまだ他にも描かれています。僕はそこを見てDestinyのカガリが好きになりましたね。人として、為政者として持っていてほしいもの、持っていなければならないものをカガリはちゃんと持っているのです。キャラクター別ベスト5も今後書いていきたいので、そこでカガリの好きなところや美点について書いていきたいですね。