非常に狭い世界でのベスト5になりますが、本日も書いて参ります。



人からよく言われるベスト5、SEED編。



第2位「キラとフレイの性描写」


意味のない性描写が不愉快、ただただ不快、性描写を入れれば観ると思ってる、品がなさすぎ、何がしたいのかわからない、何あれ視聴者ナメてんだろ、あんな描写いらない求めてない、あの二人は最低で、気持ち悪い…などと、不快に感じた方が多かったようです。


意味のない描写何てありませんし、視聴者をナメているわけでもないです。視聴者を引きつけようとして入れた描写でもないです。ちゃんと意味があります。不快に感じたのは仕方ないところもあるかと思いますが、もう少し考えてみてほしいなというのが、個人的な意見です。今回は、そこに至るまでも含めて解説していきます。




ー始まりー


ことの発端は、第9話でした。地球軍の第八艦隊先遣隊が、アークエンジェルを探しており、もう少しで合流できるところまできます。そこにはフレイの父も乗っていました。しかし、クルーゼ隊に発見され、戦闘になってしまいます。合流、ランデブーは中止、すぐに反転離脱するよう、アークエンジェルに通信電文が送られてきます。が、マリューさんは援護に向かうことを決めます。


フレイ「大丈夫だよね?パパの艦、やられたりしないわよね?」


不安がるフレイ。キラはまだ状況や事情を何も知りません。


キラ「大丈夫だよ、フレイ。僕たちも行くから」

人間、相手が不安がっていると、深く考えることなく「大丈夫だよ」と言ってしまうものです。キラはフレイを安心させようとしました。が、キラもまだ戦争の残酷さを知りません。この軽はずみに気休めの言葉をかけてしまったことが、大きなキッカケとなってしまいます。失敗すると後が怖いため、軽はずみに気休めの言葉をかけるのはやめましょう。



ー図星ー


アークエンジェルは援護に向かったものの、先遣隊は全滅してしまいます。目の前で父を失ったフレイは取り乱し、半狂乱になってしまいます。そしてこの時、フレイは戦争の被害者となったのです。


フレイ「嘘つき!大丈夫って言ったじゃない!僕たちも行くから大丈夫だって!何でパパの艦を守ってくれなかったの!?何でアイツらをやっつけてくれなかったのよ!」


怒り、憎しみ、悲しみを、敵と同じコーディネイターであるキラに、フレイはぶつけてしまいます。


軽はずみな気休めの言葉をかけると、失敗すると後が怖いの典型的なシーンです。


キラ「あんた、自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!?」


キラ「!!」


これは図星でした。キラは、最も痛いところを突かれました。


自分と同じコーディネイターを手にかける、相手には幼なじみがいる。これだけでもキラには苦しく、辛いことでした。が、それ以上に、キラは元々戦いが嫌いな優しい人です。戦いたくない人なのです。フレイの言葉は、キラに深く突き刺さりました。自分のせいで守れなかった。そのことの方が、最も辛く、苦しいことでした。


その後、フレイはキラとサイの会話を立ち聞きします。そこで、イージスに乗っているのはキラの友達であることを知ります。そこで更に憎悪を募らせ、キラへと向けていきます。


相手に友達がいる。だから、キラは本気で戦わなかったのか。その結果、キラはパパの艦を守ってくれず、アイツらをやっつけてくれなかった。フレイの中で、疑念は確信に変わりました。憎しみが、フレイを歪めていきます。



ー偽りの言葉ー


第11話で、フレイは食堂へと入っていきます。いつもならフレイはサイへと向かいますが、フレイはサイには目もくれず、真っ直ぐにキラへと歩み寄っていきます。また責めるのかと思われましたが、そうではなく、フレイはキラに謝罪してきます。


フレイ「キラ、あの時はごめんなさいね。あの時は私、パニックになっちゃって、すごい酷いこと言っちゃった。本当に、ごめんなさい。あなたは一生懸命戦って、私たちを守ってくれたのに。私…」


目に涙を浮かべて謝罪していますが、実はこれは「演技」です。当然、ここで謝罪を述べている言葉も「嘘」です。SEEDでは非常に多い、言っている言葉と心情が逆のセリフです。

フレイ「私にも、ちゃんとわかってるの。あなたは頑張ってくれてるって。なのに…」


キラ「ありがとう、フレイ…」


演技であることや、嘘の謝罪だ何て全く気がつかない素直なキラは、性格通り、素直に喜んでしまいます。喜んでしまうのは、キラが孤立している状況にあるからです。キラが求めている言葉を、フレイは知っているわけです。これまでにおいて、キラの気持ちや置かれた立場を理解してくれたり、思いやってくれた人はいません。(いたとしてもマリューさんだけ)だから、キラの乾きに乾いた心に染み渡っていってしまうのです。フレイの言葉は偽りですが、キラにとって嬉しい言葉を言ってくれるのは、この先もフレイだけです。


フレイ「戦争ってイヤよね。早く終わればいいのに…」


サイ「?」


キラ「そうだね」


フレイの異変に気がついたサイと、全く気がつかないキラ。フレイの中で、刃が目覚めた瞬間です。



ーさせられた約束ー


同じ第11話。アークエンジェルは再び戦闘になります。食堂を出たところでキラは、幼い少女のエルちゃんとぶつかってしまいます。助け起こそうとしたところをフレイが割って入ります。


フレイ「ごめんね!お兄ちゃん、急いでたから。また戦争だけど、大丈夫。このお兄ちゃんが戦って、守ってくれるからね」


エルちゃん「ほんとー?」


フレイ「うん。悪い奴は、みーんなやっつけてくれるから」

良いお姉ちゃんを装って恐ろしいことを言っているから怖いです。子供は素直にフレイの言っていることを受けとめてしまい、信じてしまいます。


子供という弱者。それは、守らねばならぬ存在です。やっつけてくれるからねというさせられた約束。戦いが嫌いなキラを戦場に出し、本気で戦わせるため、フレイは幼い少女さえ利用します。


フレイを子供は信じてしまいました。約束をさせられた以上、キラは戦わざるを得なくなります。

フレイ「そうよ。みーんなやっつけてもらわなくっちゃ」


やっつけさせるために、戦わせるためにキラを利用する。目覚めた刃は鋭くギラリと光ります。コーディネイターへの、キラへの復讐が始まりました。


キラ「アークエンジェルは、沈めさせやしない!」


フレイの思惑通り、キラは本気で戦いました。子供との約束、自分が守らねばならぬ存在、自分のせいでまた守れず、誰かを死なせることはもうしたくない。自分がもっと本気になって頑張って戦わなければならない。それらの想いがキラのSEEDを目覚めさせ、とてつもない戦い振りを見せます。そして、デュエルやブリッツを蹴散らしていきます。



ー嘘と演技ー


キラを戦わせることに成功したものの、ここで第八艦隊と合流し、キラたちがアークエンジェルから降りられる時を迎えてしまいます。ここで降りられたら、復讐は成し遂げられません。そこでフレイは、軍に志願したいと申し出ます。


ここでのフレイの目的は、ヘリオポリス組を全員残すことです。全員が残れば、その彼らを守るために戦っていたキラも残る可能性が高くなるからです。その手始めが、サイでした。


フレイは涙を流しながら志願動機を述べていきます。これは全て嘘です。流した涙は演技です。それをここにいる大人や子供たちは全く見抜くことが出来ず、間に受けてしまいました。述べ終わったあと、サイに縋るのも忘れません。

結果、何も戦争のことなどわかっておらず、思惑であることにも全く気付かないサイはフレイを降りるよう説得するのではなく、あろうことか残ることを決めてしまいました。そして、他のヘリオポリス組も何も考えることなく残ることを決めてしまいます。これはつまり、フレイの嘘の志願動機に乗せられたということでもあります。


ヘリオポリス組が残ることを知ったキラは、彼らを見捨てることなど出来るような冷酷な人ではありませんでした。彼もまた、残ることを決めてしまいます。



ーサイからキラへー


キラがロッカールームへ行くと、フレイがいました。彼女はキラを待っていたのです。来るかどうかわからないキラを。そして、フレイの思惑通り、キラは戻ってきました。そのキラに、フレイは抱きつきます。


フレイ「あなた、行っちゃったと思ったから。私、みんな残って戦ってるのに、最初に言った私だけ…だから私…私が…」

ストライクに乗って出撃しようとしたの。


キラ「…!まさか!フレイ、そんなバカなこと!モビルスーツ何て無理だよ。君みたいな女の子が!」


フレイ「だって、私…」


キラ「ストライクには、僕が乗る。フレイの分も戦うから」


その言葉が聞きたかった。


キラ「だから、フレイの想いの分もさ。もう、逃げない。決めたんだ。しょうがないよ。この戦争を終わらせなきゃ、僕たちだってさ」


戦うことを決めた。そんなキラに、フレイはキスをします。


フレイ「なら、私の想いはあなたを守るわ」

庇護者がサイからキラへと変わった瞬間です。


キラが何を求めているか、フレイは知っています。理解、肯定、温もり。戦場という極限状態の場所、同胞と戦うこと、友達と敵対すること。そんな精神的にキツイ立場に立たされるキラは、感謝や同情の言葉よりも、胸に染み渡りました。キラの気持ちを知っているフレイは、そこにつけ込みます。


キラに自分を守らせるため、戦わせるため、利用するため、フレイはキスという甘いアメを与えます。そうとは知らず、好きな女の子からのキスという甘美な果実にキラは高揚し、すっかりやる気モードになります。


以前のような沈んだ表情はなく、ハイテンションでストライクに乗り込みます。そして、元気に戦場へと出ていくのです。


フレイに踊らされているとも知らずに…。


が、キラは自身の決意は甘すぎる無力なものでしかなかったということを思い知ることになります。それは、幼い少女エルちゃんをはじめ、避難民が多く乗ったシャトルを守れず、撃墜されてしまったことです。


ーフレイの賭けー


第15話で、フレイはずっとキラのそばにいて看病しています。食堂でサイから言葉をかけられても素っ気ないです。これまでずっとサイにベッタリだったのに、このフレイの態度の変わりようにサイは驚きます。


サイ「フレイ。けどさ…」


今までずっと自分のところにいたのに、何故かキラのところにずっといる。サイがフレイの肩に手を置いて引き止めますが、振り向いたフレイの目は、はまるで挑むような目でした。


フレイ「なによ!?」


そしてフレイは、サイとの関係を一方的に終わらせてしまいます。


フレイ「(ダメよ。私は賭けに勝ったもの。キラは、戦って、戦って、戦って死ぬの。でなきゃ許さない!)」


賭けというのは、キラが残るかどうかのことです。ということは、あの志願動機は嘘っぱちということになります。もちろん、キラにしたキスも、かけた言葉もです。軍に志願したのは、キラを戦いから逃さないためです。そのためならば、ヘリオポリス組を巻き込むことになろうと、自身が危険な目に遭おうと、どうでもよかったのです。


あの時ヘリオポリス組が残っても、キラは降りる可能性がありました。しかし、キラは戻ってきて残ることを決めました。その賭けに勝ったフレイは、復讐のシナリオを実行していきます。


コーディネイターに対する復讐。そのためにキラを利用する。戦わせるためならば、キスくらい何ともない。キラを戦わせるためにアメを与えただけ。キラは戦い、戦い抜いてコーディネイターを全滅させる。その上でキラも死ねばいい。それが、フレイの復讐のシナリオです。


が、ダメよと自身を戒めているところを見るに、フレイの気持ちはサイにあることがわかります。



ー惜しみ無い献身ー


フレイは、整備の人に渡してくれって頼まれた折り紙の花を渡します。

キラ「!!」


それは、あの幼い少女エルちゃんがくれたものでした。儚い命。その命を守れず、散らせてしまったキラは、その場にうずくまり、咽び泣きます。


キラ「あの子…僕は…守れなかっ…」

守れなかった。死なせてしまった。あともう少しで地球だったのに。キラは、自分を責めて咽び泣きます。


そのキラを見て、フレイは笑みを浮かべます。
チャ~ンス。

相手が苦しみや悲しみなどで弱っている時、人は相手の思惑や悪意を読み取ることなどできません。フレイにとって、これはキラを自分に依存させることの出来る大チャンスです。依存させ、コントロールするためにフレイは甘い言葉をキラに与えます。(これももちろん偽りの言葉です)


フレイ「キラ、私がいるわ。大丈夫。私がいるから」


それは偽りの言葉。それに気付けるはずもなく、キラは目の前に差し出された癒しという名の毒に縋ってしまいます。

それに縋れば、フレイの思い通りに動くコーディネイターを根絶やしにするためにただ戦うだけの戦士として利用されるだけです。しかし、キラはこれを拒むことはできませんでした。崩壊しそうな精神を、バラバラになりそうな心を繋ぎ止めるためには、フレイに縋るしか術がなかったからです。つまり、キラが縋れる相手、逃げ込める場所はフレイしかなかったのです。


フレイ「大丈夫。私の想いが、あなたを守るから」


そう偽りの言葉を言って、フレイはキラにキスをします。キラは、そのあたたかな温もりに癒しを求めました。

フレイからすれば、こんなところで潰れてしまっては困るわけです。キラをとにかく戦わせる。戦場から逃がさない。そのためなら、大嫌いなコーディネイターに体を差し出すことだって厭いません。こうして二人は、唇だけでなく、このまま体を重ねていきます。(画像はリマスター版です)

そして第16話で、キラは戦場へと出撃していきます。


キラ「もう、誰も死なせない。死なせるもんか!」


キラの精神が危機的状況にあることがよくわかります。キラの意識が完全に戦いへといってしまっているからです。フレイのことは頭にありません。だから声をかけないし、見もしません。セリフにあるように、自分がもっと強くなって敵を倒さなければ!と思い詰めてしまっているのです。


もっと強く。もっと力を。より強い力を。甘さを捨てなければ、守りたい人たちを守れない。キラの戦い方が大きく変わるのは、ここからです。容赦のない残酷な戦い方になるのです。バクゥを踏みつけて至近距離からアグニをぶっ放したり、飛び込んできたバクゥをパンチで跳ね返し、艦の砲弾に当てたりと。


フレイ「守ってね。アイツら、みんなやっつけて」


フレイは、キラという最強の駒を手にしました。キラは自分を守る。自分を守るためなら、同胞や友達を殺してもひたすら戦い続けていく。そう。キラに戦う理由、義務を与えたのです。その上でアイツらも、キラも死ねばいい。そのためなら嫌悪し、憎むコーディネイターに惜しみ無い献身を捧げることなど厭わない。全ては復讐のため。戦え、戦え。全て滅びるその日まで。


キラ「いいから早くハッチ開けろよ!僕が行ってやっつける!」


フレイのそんな思惑に気がつかないキラはやる気満々、戦意高揚状態です。そしてガンガン戦い、敵を殺していきます。戦わされているということに気付かぬまま…。




キラとフレイがそうなるに至った経緯は、以上の通りです。フレイは復讐のため。そして庇護者のため。キラにとってはフレイだけが話しを聞いてくれました。ずっと一人ぼっちだった自分のそばにいてくれました。欲しい言葉や、温もりをくれました。(偽りですが)フレイの存在に救われていました。


二人は歪み、間違った始まりです。しかし、キラを責めることはできません。気持ち悪い?最低?戦場という極限状態、幼なじみと敵対する辛さや苦しさ、守るべき人を失った辛さ。キラとて人間です。戦いが嫌いで、戦い何てしたくないまだ少年の彼がまともな精神状態でいられるのは不可能です。


フレイとのあのシーンはキラへの「アメ」です。アメを与えて戦わせるのです。意味のない描写ではありません。それと、キラの精神状態が危機的状況にあるという描写でもあります。


以上、第2位の発表でした。



次回は第1位の発表です。