第39話のキラとアスランの話し合いのシーンについて、書いていきたい。好きなシーンでもあるため、どうしても書きたくなってしまうのです。長いので、ご注意を。





「話しがしたい。お前と…」


ラクスに言われた通り、アスランは"お友達"と話しをしようとします。話しをして、答えをみつけたいのです。そして、知りたい。キラの今を。戦う理由を。


腰を落ち着けたところで、カガリがドリンクを持ってきてくれます。キラとアスランのカップの持ち方が違うのが興味深いです。キラは片手、アスランは両手で包み込むようにして持っています。ここから、二人の育ってきた環境が垣間見えます。視聴者の皆様は、アスランよりキラと同じ持ち方をするのが多いのではないでしょうか?

ここから、キラは自分が選んだ道を話し始めます。


アスラン「しかし、それは…」


キラ「うん。大変だってことはわかってる。でも、仕方ない。僕もそう思うから。カガリのお父さんの言う通りだと思うから。オーブが地球軍の側につけば、大西洋連邦は、その力も利用してプラントを攻めるよ。ザフトの側についても、同じことだ。ただ、敵が変わるだけで。それじゃあしょうがない。そんなのはもうイヤなんだ、僕は。だから…」


キラは、オーブが地球軍と戦うことになった理由をアスランに説明します。オーブが地球軍、ザフト、どちらにも属さず、中立の立場を守ろうとしたからだと。だから、地球軍が侵攻してきたのだと。


アスランの言いたいことは、理想を掲げるのはいいけど、それで敗戦し、国が滅ぼされたら理想もヘッタクレもないだろということです。もちろん、キラにはそれはとっくにわかっていることなので、「うん。大変だってことはわかってる」と答えるのです。


戦争している当事者のどちらか一方につけば、必ずどちらか一方は敵になります。今オーブが中立の立場を棄てて地球軍についたとしても、一時的に戦いは回避され、安寧は守られるかもしれません。しかし、そうなると、今度はザフトが敵になるため、結局は攻められることに変わりはないのです。キラの言う「敵が変わるだけで同じこと」というのは、そういうことなのです。


一番大変で、難しいと言われる道を選んだキラ。ナチュラルとコーディネイターの共存や、中立という立場も理想でしかないかもしれません。所詮は理想と言い捨てたくもなります。しかし、そう決めつけて誰もが諦めてしまったら、もうお互いに滅ぼし合うしかありません。そうなってからこれは間違いだったと気付いても、遅いのです。時も命も戻らないからです。それが現実だから仕方がないと皆が諦めてしまった時、それはもう終わりを意味します。それだけは避けなければならない。だから、キラはウズミ様に賛同し、オーブ側について戦うことを決めたのです。


キラ「僕は、君の仲間…友達を殺した。でも、僕は彼を知らない。殺したかったわけでもない。君も、トールを殺した」


アスラン「えっ?」

キラ、突然キツイこと言います。アスランも僕と同じことをしたんだよと。しかし、アスランの反応を見るに、自分がキラの友達を殺した何て自覚はなく、覚えていないと思われます。(必死でしたしね)


キラ「でも、君もトールのこと、知らない。殺したかったわけでもないだろ?」


そう。アスランはトールのことを知りませんし、憎かったり恨んでいたわけでもありません。殺したかったわけでもありません。ただ自分の目の前にいたから…撃つべき「敵」だったから撃ったのです。それが、誰かの大切な人かもしれないとか、何も考えることなく。そうやって戦い続け、多くの人を殺してきました。


アスラン「俺は…お前を殺そうとした」


キラ「僕もさ。アスラン」


二人とも、お互いのことを知っていました。しかし、ついに二人は憎悪を抱き、戦ってしまいました。それは、お互いに「敵」だったからです。それが戦争の現実です。そんなお互いに知っている者同士で戦ったからこそ、それを痛みとして受けとめることが出来たのです。そしてだからこそ、この「戦争」というものの虚しさや愚かさ、矛盾に気が付いたとも言えます。


キラ「戦わないですむ世界ならいい。そんな世界に、ずっといられたんなら…」


戦わないですむ世界。戦争何てなければ、キラはあのまま平穏な学生生活を送っていられたでしょうし、欺瞞に満ちた偽りの友情であっても
それなりに仲良く楽しくやっていけたはずです。しかし、戦争はそれらを壊し、飲み込みました。世界を敵か味方か二つに分け、人を人と思えぬようになり、憎しみや怒りばかりが増幅し、その敵を殺すことが味方や国を守り、戦争は終わると考えてきました。が、その理由が間違っているのです。


キラ「でも、戦争はどんどん広がろうとするばかりで…」


敵だから殺す。撃たれて奪われたものの悲しみと痛み。やられたからやり返す。奪われたから奪い返す。その繰り返しでは、永遠に戦いは終わりません。そんなことを繰り返していけば、待ち受けるのは殲滅戦争のみです。敵であるものを全て滅ぼすという。それが間違いだと気付いたからこそ、キラはどちらにも属さない道を選びました。キラに敵を滅ぼす以外にも道はあることを最初に示唆したのは、バルトフェルドでした。そしてキラは、ラクスに考える時間を与えられ、答えを出しました。その道がどんなに難しく大変な道であっても、お互いがお互いを滅ぼし合うことは阻止しなければならない。


キラ「このままじゃ、本当にプラントと地球はお互いに滅ぼし合うしかなくなるよ。だから、僕も戦うんだ。例え守るためでも、もう銃を撃ってしまった僕だから…」

このセリフから、キラのその強い決意と覚悟が見て取れます。一人でもキラは戦います。


キラ「僕たちも、また戦うのかな?」


アスラン「!…キラ…」

ハッとするアスラン。脳裏によみがえる、ラクスに言われた言葉。


ラクス「敵だと言うのなら、わたくしを撃ちますか!?ザフトのアスラン・ザラ!」


キラとラクスの言っていることは大体同じです。


今のアスランは、キラにとっては「敵」です。が、道を決め、選ぶのはアスランです。キラは、自分が選んだ道を話しました。あとは、アスラン次第です。キラもラクス同様、答えは与えません。何も求めません。もう戻らなきゃと去っていこうとします。


アスラン「一つだけ聞きたい。フリーダムには、ニュートロン・ジャマーキャンセラーが搭載されている。そのデータ、お前は…


キラ「ここで、アレを何かに利用しようとする人がいるなら、僕が撃つ」

これでハッキリしました。キラたちは勝つことや滅ぼすことを目的とはしていないことが。データを使えば、オーブは楽に守れます。しかし、それでは地球軍が全て滅んでしまいます。そんなこと、キラたちは望んでいません。キラたちは、そんな戦いを可能にしてしまう「戦争」そのものが「敵」なのです。そして残念ながら、今のアスランは戦争の一部です。


軍人として与えられた任務を忠実に実行するザフトのアスラン・ザラとして戦うか。自分の意志と考えで戦う一人のアスラン・ザラとして戦うか。


キラとの誤解や仲違いは終わりました。が、アスランは迷います。


そして続く第40話。再び地球軍が侵攻してきます。


オーブに勝ち目はないと言うアスランに、キラはこう答えます。


キラ「多分、みんなもね。でも、勝ち目がないから戦うのをやめて言いなりになるって、そんなことできないでしょ?大切なのは、何のために戦うかで。だから、僕も行くんだ。本当は戦いたく何てないけど、戦わなきゃ守れないものもあるから。ごめんね、アスラン。ありがとう。話せて嬉しかった」

本当は戦いたく何てない。これはキラの本音です。しかし、戦いたくないからと言って何もしないで言いなりになるんですか?


そんなことはできません。戦うべき時には戦わなければならないのです。守りたいものと、守る力があるのなら。


キラはもう戦う決意と覚悟を固めています。決めたら絶対に揺らがない。そんなキラを止めたり、翻意させることはできません。それは、アスランが一番知っていることです。


「ありがとう。話せて嬉しかった」。ありがとうは、会いに来てくれたことや、一度は助けてくれたこと、心配してくれたこととか、全てに対する感謝で、同時にアスランに対する別れの言葉でもあったでしょう。話せて嬉しかったも。アスランはザフトの軍人ですし、迷っていましたから、戦わない可能性も考えられますからね。


大切なのは、何のために戦うか。


アスランは、何のために戦うのか。命令のため?勲章のため?


アスランの中で答えは出ていますが、その一歩が踏み出せません。その時、ディアッカが声をかけます。


ディアッカ「参ったねぇ。お前、アレの奪還命令受けてんだろ?…はぁ。やっぱマズイんだろうなぁ。俺たちザフトが介入しちゃよぉ」


咎められた。そう思ったから、アスランは唇を噛みます。が、実際はディアッカに咎める気は毛頭なく、アスランの真意をわかっているからこそ、背中を押してあげているだけです。


そしてついに、本心を吐き出します。


アスラン「だが、俺はあいつ…
あいつらを死なせたくない!」

何のために戦うか。それは、キラやカガリたちを死なせたくないから。彼らがやろうとしていることを助け、守りたいから。


今までアスランは、国を守るためや、戦争を早く終わらせるためには命令に従って戦い、敵を撃つことだと信じていました。が、ラクスとの会話、父の豹変、二度と使わないとした核に手を出した状況を見て、知ったことで自らの戦う理由に疑問を抱くようになりました。国や軍の命令に従って敵を撃つことが、本当に戦争終結の道なのか?と。少年やマルキオ導師との出会い、各地の爪痕、キラとの会話、これまでの戦いから戦争の本質を知り、このままではお互いに滅ぼし合うしかなくなることを知った時、アスランは命令に従って敵を撃つという軍人であることを捨てました。そして、アスランがこの戦争を終わらせるために取った道は、キラたちと共に戦う道でした。これはつまり、国や軍の命令に従って敵を撃っていては戦争は終わらず、平和にはならないと一つの答えを出したということになります。


ディアッカ「珍しく…ってか、初めて意見が合うじゃんか」
アスラン「えっ…?」

何度観ても良いシーンですね。ディアッカとミリアリアのところでも触れましたが、もう人をバカにしたり、笑ったり、無神経なことを言わなくなったディアッカに、笑われる、バカにされることがわかっていても、自分はこうしたい!とハッキリ言ったアスラン。二人ともカッコイイです。ディアッカ何て、本当に良い顔してます。一番良い顔なのだから、作画も力が入るというものです。(大貫さん作画監督回はやっぱりイイネ!)



その後、キラの不利な状況にアスランが駆けつけます。


キラ「アスラン!?どうして!?」


勝ち目がないことがわかっているのに。何よりアスランはザフトの軍人でこの戦いには関係ないし、むしろ軍から命令を受けている身。なのに、キラを助けにきました。


アスラン「俺たちにだってわかってるさ!戦ってでも、守らなきゃいけないものがあることぐらい!」


と言ったあとにディアッカが映るのが好きなんですよね。

ディアッカにも戦ってでも守りたいものがあります。そして、彼も戦争の本質を知りました。二人もまた、キラたちに賛同したということになります。


アスラン「蹴散らすぞ!」

こんなにも頼もしく心強い言葉がありますか!


自分の背中を安心して任せられる人がいる。守ってくれる人がいる。勝ち目がないとわかっていながら、賛同して協力してくれる人がいる。そりゃキラの目は涙ぐむのではないでしょうか?(僕にはそう見えたのです)

良い回で、良いシーンですよ。39話と40話は。好きなシーンベスト5とかもやりたいですね。あと、キラとラクスベスト5も。もう書きたいことが多すぎて、悩ましいです。



次回こそ、友人からよく言われる、ツッコまれるシーンについて書いていきます。書いていくというのは、僕なりに解説やお答えしていくということです。あんまり長々とやってもなと思うので、ベスト5にしてお送りします。