2023.9.25
Camona da Maighels ヒュッテへ
今日は、この旅行の最大の難関、Camona da Maighels ヒュッテへ登る日です。
朝食を済ませて約束の9時にレストランで待機していると、宿(Piz Calmot)のマネージャーが現れました。
彼の車でクネクネの下り坂を20分ほど走ると、アスファルトの道と砂利道との分岐点に差し掛かりました。 そこが山小屋へのルートの出発点でした。
Google Mapで調べると、山小屋までは5km所要1時間30分と出てきました。時刻は10時30分。いよいよ山歩きの開始です。
途中まで車で送ってもらったのは良いのですが、ホテルからは、だいぶ高度を下げてしまいましたので、距離的には近くなったものの、高低差を考えると登りがきつくなった分だけ損をしたのではないかと思いましたが、どちらの道を選択するのが正解だったのかは今以って分かりません。まあ、ご厚意に感謝しましょう。
山小屋への道は車が楽に擦違えるほどの砂利道で、足元は問題ありませんでした。
私は10分歩いては立止まって息を整え、写真を撮ったりしながら、ゆっくり休み休み登っていきました。
寒いといけないと思って防寒服は全て着込んで来ましたが、強い陽射しでポカポカと温かく汗をかいてきましたので、すべてを脱いでリュックに括り付け、Tシャツ1枚になって歩き続けました。
途中、後ろから登って来た自転車の人や、早いペースで歩いてきた人に追い抜かれましたが、私は気にせず自分のペースでゆっくり歩みを進めました。
単なる物置小屋のようです。
途中、清流が勢いよく流れ下っている小川がありました。これがライン河の源流かな?と思って写真を撮りましたが、後でこれが紛れもなくライン河の生まれたばかりの姿であると判りました。
途中何か所かに標識がありましたので、道に迷う不安はありませんでしたが、延々と続く登り坂にはウンザリしました。
下の写真は、トーマ湖(La da Tuma)と私の泊まるCamona da Maighelsヒュッテの方向を右向きの矢印で示す標識です。そして、左向きの矢印で示されているTschamut(チャムット)が明後日に私が列車に乗るために向かう村です。ここが分岐点になるんだなと景色を記憶にとどめました。
道は車の通れるような道ですから険しくはないのですが、延々と歩くうちにだんだん体力が落ちてきて、自分の靴幅くらいの歩幅で芋虫が這うようにノロノロと喘ぎあえぎ登っていきました。
未だか未だかと思いながら重い足を引き摺っていくのですが、道は延々と続くだけ・・・
道の周囲に所々残雪が残っているようになった頃、カーブを曲がってふと左手の山頂に目をやると、何とそこに目指す山小屋が姿を現していました。
私は「あ!見えた―!」と思わず歓喜の声を上げてしまいました。
山小屋が見えれば後は楽勝です。先が見えたので元気が出ました。
歩みを進めると、左手の山小屋カモナ・ダ・マイゲルスヒュッテ(Camona da Maighels CAS)への分岐を示す道標がありました。
同じポールの反対側には、ライン河の源流トーマ湖(La da Tuma)の方向を示す標識がありました。トーマ湖はここから右の細いトレイルを進むようです。
ここから左手に伸びる山小屋への道を進むのですが、勾配が急になっているようで、なかなか歩みが捗りません。息が切れるばかりです。
ハアハア息を切らして漸く山小屋に辿り着きました。 時刻は12:30でした。
標準的な所要時間1時間半のところを3時間かけて登ってきたことになります。
体力の衰えを痛感しました。
調理場を兼ねるレセプションで名前を告げると、係の女性が寝室に案内してくれました。山小屋らしい2段ベッドの部屋で、ベッドはいくつかに仕切られていますので、辛うじて雑魚寝ではないようになっています。
係の女性は、一番奥の1つのベッドが独立して仕切られているところを指さして、「ここが一番寝やすいところよ。マットレスも柔らかいしね。」と教えてくれました。 ベッドは12人分あるように見えましたが、今晩はこの部屋に3人位が泊まるそうです。
「トイレは何処なの?」と訊くと「1階にあるトイレしかないのよ。」といいます。「それじゃ、夜中にトイレに行きたくて目が覚めたら、わざわざ1階まで降りて行かなければならないの?」と訊くと当然のように「そうよ。」と答えます。
「じゃ、シャワーは何処なの?」と訊くと、「シャワーを使いたい場合は、スタッフに声をかけてちょうだい。そしたら鍵を渡すワ。シャワーは有料で5sfrよ。ここはホテルと違うからね。」とにっこり笑いながら答えました。
私は、熱いシャワーを浴びて、汗を流し、疲れを癒したかったのですが、そう言われてみると、あれだけ汗だくになって登ってきたにもかかわらず、湿度が低く乾燥していて気温も低いせいか、身体はサラサラでシャワーを浴びなくても気持ちが悪いということはないように思われたので、我慢しちゃうことにしました。
寝室は薄暗くてとても寒いので、戸外に出て夕食までの時間を潰すことにしました。
周囲の素晴らしい眺めに見とれながら山小屋の周りを散策しました。
ブランコの先に、最高に眺めが良いベンチがあったので座ってみました。
ボーッと景色を眺めながら座っていると、強い陽射しがポカポカと心地良く、眠気に誘われました。 靴を脱いでベンチに横になると、直ぐに眠ってしまったようです。30分くらいも寝たでしょうか。口の中がカラカラになって目が覚めました。
山小屋の前のカフェのテーブルには、犬を連れた物静かそうな老人が旨そうなスープを飲んでいました。自然にこの老人と目が合い、挨拶を交わしました。
何処から来たのかと訊かれたので、日本からだと答えると突然嬉しそうな顔をして、「オー、ワタシ ニホンニ イマシタネ。ダカラ ニホンゴ スコシ シャベレマス。」とゆっくり喋るではありませんか! 逆に私の方が英語で喋り、彼が日本語で答えるという、妙な会話が盛り上がりました。
彼はチューリッヒ湖の東岸にあるエルレンバッハ(Erlenbach)在住で、若い頃京都に1年半ほど住んでいたことがあるそうです。種子島や屋久島にも住んだことがあるそうで、当時のことを懐かしく話していました。
昨年、愛犬が亡くなってとても悲しくて、今の犬を飼うようになったそうで、家には奥さんが面倒を見るもう一匹の犬がいて、2匹とも猟犬としての訓練を受けているそうで、とても賢く大人しい犬でした。
彼は1948年の生まれで、私と同じ75歳だというのでまたビックリ。 色々な山に登るのが好きだそうで、登山慣れしているらしく、私より体力がありそうでした。
夕刻になると、山の頂に夕日が沈み、気温が下がってきます。
山小屋の夕食は6時30分からです。時間になったので食堂に降りてみると、10人位のゲストが団欒していました。すべてドイツ語ですので私にはBGMのようなもので内容はチンプンカンプン。会話に加われない悲しさを感じました。
同室になった男性が気を使って英語で話題を振ってくれるのですが、その英語も聞き取り辛く、思うように会話が盛り上がらないもどかしさを感じました。
夕食のメニューは、先ず美味しいスープが大きなボールで提供され、銘々で分け合っていただきます。
次に山盛りのサラダが提供され、これも皆で分け合います。(スープとサラダの写真は撮り忘れ)
メインは、私の大好きなキノコ入りのリゾットでした。それに太いソーセージが一人1本出されました。リゾットのお替りは自由でしたので、お腹一杯食べました。
デザートは特製のアイスクリームでした。 どれも大変美味しゅうございました。
夕食後、戸外に出てみると、向かいの山の稜線から月が昇る所でした。
この山小屋にはWiFiがありませんので、ブログを更新することも出来ず、やることがないので夕食後は、8時頃ベッドに潜り込み早々に寝てしまいました。
明日は、いよいよライン河の源流、「トーマ湖」を目指します。