2023.8.2

 

ナヴァイオビーチへのクルージング

 

 

ザキントス島へ来た最大にして唯一の目的、「ナヴァイオビーチへのクルージング」に参加する日がついにやって来ました。

 

ナヴァイオビーチは別名 shipwreck beach (難破船のビーチ)とも呼ばれます。

☆1980年にこの浜で座礁したパナヨティス号の残骸が横たわる白い砂浜の光景。

☆屏風のように入り江を取り囲む白亜の断崖絶壁。

☆ミルキーブルーからコバルトブルーに変化する海のグラデーション。

これらのコントラストの美しさから「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景」に選出されるほどの場所です。

特に宮崎駿のジブリ映画「紅の豚」の主人公ポルコの隠れ家のモデルとなったことから、日本人をはじめ世界中から観光客が押し寄せる人気スポットとなっています。

 

ところが残念なことに、2018年8月の地震でナヴァイオ海岸の断崖の一部が崩落する事故があり、以来今日まで浜への上陸は禁止されているそうです

難破船と一緒に写真を撮ったり、美しい白いビーチで泳いだりすることが出来ないのは誠に残念なことですが、考えようによっては、観光客でごった返したビーチではなく、誰もいない白浜と難破船の写真を至近距離から好きなだけ撮影できるということは、大きなメリットであると言えなくもありません。ものは考えようです。

そもそも、美しい被写体は、接近しすぎたりその中に入ってしまうよりも、遠くから見た方が美しいことが多いと私は思っています。宮殿、寺院、お城、山岳、ご婦人…そして難破船も然りです。

 

 

朝8:30の集合時間に遅れないよう、ホテルでの朝食を済ませて早々に港に向かいました。

 

漁師の小舟が岸壁で新鮮な魚を売っていました。

料理が出来るアパート住まいだったらきっと衝動買いしていたことでしょう。

蠅がブンブン集っていました

 

クルーズ船の乗り場に着くと、既に乗船を受け付けていました。

ひときわ大きな船です

 

早々と乗り込んで、最上階の最前列の左側の席を確保しました。ここからなら誰にも邪魔されずに景色を眺められる筈です。

 

ここは日差しを遮るものがありませんが、今日は一日タップリ日焼けするつもりで来ましたので、暑いのは覚悟の上です。

 

我々の船の横に、別の会社の船も泊まっていましたが、我々の船より小さいのに、物凄く沢山の乗客を乗せようとしています。

見ると、大型の観光バスが何台も止まって、大勢の乗客を船に送り込んでいます。乗客は席を探すのに右往左往。座る場所が無くて立っているお客さんも多くいます。

「あー、クルーズの予約をする時には、観光会社のツアーとタッグを組んでいるような船を選ばないようにしないといけないな。」とつくづく思いました。

 

9時過ぎに船はゆっくりと岸を離れました。

沖合から見るザキントスタウンの景色はなかなか美しいです。

 

 

船は、島の海岸線を左手に見ながらゆったりと航行します。

大型船なので殆ど揺れません。

 

イオニア海の島々は緑に覆われていて、所々に糸杉が生えていたりして、どこか北イタリアの海岸線のような雰囲気があります。

荒涼とした禿山の麓に白い家々が点在するエーゲ海の島々との対比が興味深いです。

 

 

やがて海岸の景色が、緑の多いなだらかな陸地から、険しい断崖に変わり、幾つもの洞窟が穿たれている様子が見られるようになってきました。

それらの洞窟の周りに小型船が接近し、洞窟の中を覗き込むようにしています。
我々の船は大きいので、そのように洞窟に近付くことはできません。

景色を見ずに寝ている人が多い

若い女性たちが船の先端部分の縁に寝そべって、日光浴を楽しんでいました。彼女たちは全く景色を見ようとしないのが不思議です。それにしても足が長いなー!

 

船はやがて切り立った断崖に囲まれた入り江に停泊し、錨を降ろしました。

係の男性がロープを引っ張って岸に向かって泳いで行き、海面に出ている岩礁にしっかりとロープを固定しました。

さあ、スイミングを楽しむ時間です!

みんな水着になって我先に海に入っていきます。 

私もシュノーケルを着けて海に入りました。

ひときわ黒いくて、足、短か!

 

まるで卵から孵ったウミガメの赤ちゃんが一度に海に放出されたような光景です。

 

澄み切ったブルーの海で泳ぐのはとても気持ちが良いです。

 

水深は10メートルもあろうかと思われますが、海底の様子が良く見えます。


岩がゴロゴロ転がっていますが魚は殆どいません。

沖縄のサンゴ礁のように泳いでいて面白い海ではありません。

 

断崖の上の建物が素敵

皆さん一頻り泳ぐと三々五々船に上がって日光浴に余念がありません。

中には45分のタイムリミットギリギリまで海に浮かんでいる人もいました。

 

船は汽笛を鳴らして全員を船に上がらせ、錨を上げてまた航海を続けます。

 

 

 

 

 

やがて切り立った断崖が高さを増してくる頃、岬を回り込むと、美しい帆船やクルーズ船が停泊している入り江が現れました。

 

 

 

 

 

白い浜に茶色く錆びた難破船が横たわっているのが見えてきました。いよいよ目的地のナヴァイオビーチに到着です。

今まで目を瞑って微睡んでいたお客さん達も、急に色めきたち始めました。

 

この入り江の海水は、牛乳とブルーの絵の具を混ぜ合わせたような乳白色の不思議な色をしています。行き交う小舟の影が海底に写り、まるで船が宙に浮いているように見えます。

 

 

我々の乗った船はゆっくりと岸に近付き、左右に船首を振って両舷のお客さんに均等に写真を撮るチャンスを与えようと配慮していました。

難破船が日陰の中なのがチト残念

 

もう数時間後だったら良かった…

 

 

ミルキーブルーの海に浮かぶボートが、あたかも宙に浮いているように見える様子をビデオでご覧ください。

 

 

船は10分ほど留まった後、静かに岸を離れ、今来たルートを逆に辿り始めました。

 

断崖が連なる海岸線の景色は相変わらず美しいのですが、殆どの乗客は目を閉じて眠ったり、仰向けに寝転んで日光浴をしたりして、景色を楽しむ人は少数派でした。

直ぐに影響されやすい我々です

 

 

 

 

往きのワクワク感が薄れ、船全体に倦怠感が漂い、皆さんクルージングにウンザリしてきた頃、船が減速し始めました。

どうやらこの先のビーチで泳がせるつもりのようです。

 

先程と同じように錨とロープで船体を固定した後、スイミングタイムの開始です。

寝ていた乗客も重い身体を起こし、押し出されるように海へと入っていきました。

 

 

見ると、他の船からも続々と乗客が吐き出されてきます。

 

それまで狭いビーチで静かに休んでいた人たちは、突然大きな船がやってきて沢山の乗客を泳がせ始めたのでビックリ! 目をパチクリしていました。

右が私、左がイタリアおやじ

 

浜は白い小石のビーチで、仰向けに寝ているととても気持ちが良いです。

 

同じ船から泳いで来た、デップリとお腹の出たオジサンと話をしました。

私と同じくらい黒く日焼けしていました。

「良い色に焼けてますね。」

「あんたも同じくらい黒いね。どこから来たんだい?」

「日本からです。東京です。」

「ああ、東京かー。ワシは行ったこと無いよ。大きい街らしいね。人も沢山居るんだってね。」

「あなたはどちらから?」

「イタリアだよ。」

「わー、イタリアですか!私はイタリアが大好きで、方々に行っていますよ。アマルフィーやポジターノなんか良いですね。」

「ワシはアマルフィーの近くのサレルノから来たんだよ。」

「サレルノ! 知っています。ナポリからのバスの終点でしたね。」

「ワシはこういう人が多いのは嫌いだ。」

「ははは、同感です。」(ならツアーなんかに参加しなきゃいいのに…とは言いませんでした。)

 

 

私は30分位で船に引き上げました。

 

船から下を見ると、スタイルの良い女性が、人々の群れから離れて一人優雅に泳いでいました。 長い髪を海中に広げ、まるで人魚のようです。(見たこと無いけど)

思わず写真に撮ってしまいました。

 

海から上がってきたその女性にスマホの写真を見せ、「要るなら送ってあげるよ。」と言うと「有難う!」と言って、立ち上げた私のスマホのメールの宛先に彼女が自分からアドレスを入力しました。私を信頼してくれたのか、この爺さんは人畜無害だと見縊られたのかは分かりません。

 

 

やがて船はザキントスタウンの港を目指して帰路につき、船内には再び気怠い雰囲気が漂い始めました。

そして、大きな虚脱感の塊を乗せて、漸く船は港に辿り着きました。
港の入り口は狭いので、船はゆっくりと慎重に入港していきます。

 

 

クルージングからホテルに戻り、シャワーを浴びた後、お腹が空いたのでディナーを食べに出かけました。

「何を食べようか…?」と話しながらレストランを物色しながら歩いて行くと、旨そうな肉を串刺しにしてグルグル廻しながら焼いている店の前で、二人の足が釘付けになりました。

     スブラキ(souvlaki)   と    ギロス(Gyros)

どちらも典型的なギリシャ料理です。

 

これを食べよう! 二人の意見は直ちに一致! このレストランに入りました。
まだ時間が早いので緊張感なし

中央の緑のシャツがオーナーです。

 

先ずはキンキンに冷えた生ビールで乾杯です!

 

注文したのは、ポークとチキンのスブラキです。

 

どちらも大変美味!!!  二人ともむしゃぶりつく様にバクバクと食べました。

ビールが進む進む!  通りが埃っぽいのなんか気にしている余裕はありません。

このソースが旨いね!ホントね!

 

 

仕上げはホテルの屋上バーで。
家内はカクテル《マルゲリータ》、私はギリシャコーヒー。

 

徐々に日が暮れて、いい雰囲気です。

 

 

 

港の突堤の先からザキントスタウンの夜景を見たら綺麗に違いない…ということで、夜の散歩に出かけてみました。

 

確かに街の灯かりが水面に写って美しかったです。

 

振り返ると、沖の水平線から物凄く大きな橙色のフルムーンが昇っていました。

感動ものでした!

 

ホテルの屋上に戻って、もう一度フルムーンを観賞しました。

 

今日も素晴らしい一日でした。