2018.8.7

肉屋のホセに包丁を研いでもらった話


持参してきたマイ包丁の切れが悪くなってきた。

出かける前に、砥石で十分に研いで切れ味抜群にして来た筈なのに、ひと月経つと切れ味がとても悪くなってきた。

肉屋や魚屋で見ていると、スイスイと気持ちよく切れる包丁を使っていて羨ましく思えた。

そこで昨日、思い切っていつも行く肉屋のホセに、「僕の包丁が切れなくなってきたんだけど、持ってきたら研いでくれる?」とジェスチャー交じりの拙い英語で訊いてみた。
ホセは全く英語が出来ないので、最初は怪訝そうな顔をしていたが、それでも忙しい手を休め、真剣に私の質問を理解しようと努力してくれた。

周りのお客のオバサンも、「この人こう言ってるんじゃないの?」などと会話に参加してくれて、ようやくホセも私の質問を理解したらしく、「ああ、いいよ。明日の午前中に持っておいで。」と快諾してくれた。


今日、さっそく店に包丁を持って行くと、ホセは直ぐに包丁を受け取り奥のバックヤードに入って行った。
待っていると、奥からチーン、チェーン、と機械で包丁を研ぐ音がして、約5分程かけて入念に研いでくれた。
やがて包丁を持って出てきたホセは、店の他のお客の注文の肉を私の包丁で切ってみて、切れ味を確かめ、またバックヤードに戻って再び仕上げの研ぎを入れたり、同僚の女性にも日本の包丁の切れ味を試させたりしていた。

イメージ 1


同僚の女性に
包丁を試し切り
させるホセ。

「この包丁で切って見ろよ。日本の包丁はよく切れるぜ。」と言っているのかいないのか…。




最後に、店先で使う棒状のスチール製砥ぎ棒でシャッ、シャッと仕上げをして、よく包丁を洗って渡してくれた。

「ムーチョ・グラシアス!」というと、ホセはにっこり笑って「デナーダ」と返してきた。


アパートに帰って試し切りしてみると、材料に吸い付くように気持ちよく切れる。
これで料理がまた楽しく出来るようになった。



しかし・・・


しかし、包丁の刃先をよく見ると写真のように細かい砥ぎ跡が認められる。

イメージ 2





 研いでもらった
 包丁の刃先







おそらく、顕微鏡で刃先を見ると、ノコギリの歯のようにギザギザになっているに違いない。
だから、一時は切れ味が良くなったように錯覚するが、刃先を研ぎ出している訳ではないので、暫くすると前以上に切れ味が悪くなってしまう可能性が高い。

欧米の包丁は主にステンレス製だから、『包丁を研ぐ』という概念が無く、シャープナーや砥ぎ棒で刃先をギザギザに荒らし、一時的に切れ味を良くするという概念しかないのだろう。

一方、日本の高級包丁には鋼(はがね)が入っている。 日本刀と同じ構造だ。
もちろん私のも。
だから本当は砥石で研いで、刃先を付ける必要がある。
ホセに頼む時も、砥石で研ぐジェスチャーをしたんだが、分からなかったんだろうなー。


私は、肉屋のあの切れ味の良さそうな包丁が、シャープナーで刃先を荒らしているだけなのか、それとも砥石で刃を研ぎ出しているものなのかを知りたかった…、というよりもホセが砥石で研ぎ出してくれることを秘かに期待していたのだが…。

ホセが一生懸命研いでくれたのに大変申し訳ないが、この切れ味は長続きしないだろう。
今度切れなくなったら、どこかで砥石の代わりになるような石を拾ってきて、自分で砥いでみようと思う。

それとも、来年は砥石も持参してくるかな…。 それは重いしなー。