何かの物音がした気がして目が覚めた。
辺りを見回してみるも何の変化もない。
肩にカーディガンがかかっていた。あれ…。こんなの羽織ったかな。全然記憶にない。
飲みかけのビールをキッチンへ片付けて戻ると、テーブルの上の 想いをしたためた紙が目に入った。
ざっと読み返していると、酔っ払っていたのと眠気とで後半は字が酷いことになっていた。我ながら笑える。
最後まで読んだ時、一瞬時が止まった。
……え⁉︎
【ごめんな。】
私の字ではない文字で、そう書かれていた。
カズさん…来たんだ。
まだどこかにいるかと家中探してみるが居なかった。
『カズさん…』
また置いて行かれたような気持ちになって涙が溢れてきた。
ソファのカズさんの定位置に顔を埋めて、私は子供のように泣きじゃくりながらそのまま眠ってしまった。
.
朝目覚めて携帯を確認すると…
カズさんからいくつか着信が入っていた。
全然気付かなかった。ひとつは通話したことになっている。…覚えていない。
メールも入っていた。
≫アコごめんな。全然気付いてなかった。お前にそんな淋しい想いさせてたなんて。
俺が守ってやるって言っといて、俺がお前傷付けてんだもんな。
鍵、開いてたよ。さっき帰る時玄関にあった鍵使って閉めたから、明日にでも取りに来て。
カズさんが仕事に行っちゃう前に鍵を取りに行かなきゃ。
軽く朝食を摂り、シャワーを浴びメールを返した。
>昨日、来たんだね。気付かなかった。着信も全然知らないの。なんか話した?記憶にない…。
起きたら教えて下さい。鍵取りに行きます。
お昼少し前、カズさんから
≫起きた。
と連絡があった。
カズさんの家へと向かう。
ピンポーン♫
無言で、鍵の開く音だけが聞こえた。
戸が開けられるのを待つ。
少し戸が開けられ隙間からカズさんの手だけが出てきた。
その手には私の鍵。
え………
私達、これでもう終わりなの?
これを受け取ったら、戸が閉められて……それで終わりなの?
激しい動悸がした。
胸がギューッと締め付けられるように苦しくなった。