朝目覚めた時、隣に愛する人がいる。その幸せを噛み締めながらカズさんの顔を眺める。
眉・目・睫毛・鼻・口・耳・髭。
全てが愛おしい。
幸せだな~
…そのまま、また眠りに引き込まれる。
…次に目を開けた時、カズさんがコッチを見ていてびっくりした。
「おはようございます///」
『うっす。』
視線をそらさずそう答え、そのまま見つめ続けられる。
「…うっす。うふふ。」
『ふふ。』
「『…………。』」
『おいで。』
右手で自分の左肩をポンポンとした言った。
素直に従いカズさんの肩に頭をのせる。
「今日、お休みならいいのにな。」
『そうですなぁ』
「明日もお休みならいいのにな。」
『そうですなぁ』
「明日も明日も明日も明日もずっとお休みならいいのにな。」
『そぉ?』
「そしたら…。ビールが美味しく飲めないね。ダメだ。」
『へ?そこ?結局w』
「大事な事でしょ?それに…、会えない時間があるから会える時間が楽しみになる。お互いのそれぞれの空間があるから、一緒に過ごす空間が大切になる。ずーーっとお休みでずーーっと一緒じゃ、嫌んなっちゃいそう。」
『付かず離れず…』
「そうそう、それ!」
『いいですなぁ。俺も同じよ。俺たち似てんのかなぁ?』
「同じ⁉︎良かったぁ。そういう感覚の一致って大事だよね!
さ、行く準備しよ!」
カズさんが私を笑って見ている。
「なんで笑ってるの??」
『かわいいな、と思って。
今日は休みがいいって言ってたのよさっきまで、うちの姫様。なのに…ククク。』
カズさんは口元を肩に隠して笑った。
.
「朝ごはん、ちゃんと食べなきゃだめだよ。」
『うーん。じゃ、コーヒーお願いします。』
「コーヒーだけ?」
『後で食べるよ。ちゃんと食べる。うん。』
大真面目な顔でそう答えるカズさん。
…絶対食べないでしょ。
「もー。はい、どうぞ。」
コーヒーを渡すと、
『すんませんね。あざす。』
そう言って受け取ったあと続けて言った。
『アコちゃん、あれよ?いつもいつも食べないわけじゃないのよ。たまたま。今日はたまたま食べたくないの。明日は食べる。』
「明日も食べたくない気分かもしれないじゃない。」
『食べる食べる。食べるって。
あ、でも。明日朝早いんだよね。だから一緒には食べれないかな~』
「もぉー、確信犯!」
『ははは!
あ、でね。今日は帰りちょっと遅いのよ。んで、明日は朝早いから、今日は会えない…かな。』
「そうなんだ。分かった。」
『あ、でもなんかあったらすぐ連絡すんだぞ。』
「うん、ありがとう。」
『じゃ、俺帰るわ。コーヒーありがと。』
玄関へと歩いていくカズさんを見送るため付いていく。
『アコ、気を付けてね。』
ルームシューズのようなサンダルのようなのを履いたカズさんは振り返ってそう言うと、ジッと私を見つめた。
「うん、カズさんも。いってらっしゃい。」
『おぉ。行ってきます。アコ、行ってらっしゃい。』
「行ってきます…」
お別れが淋しい。もっとカズさんと一緒にいたい。
“付かず離れず” そんな距離感が丁度いい。それは本心だけど、でもやっぱり離れ離れになる瞬間は淋しくて、“離れたくない。ずっと一緒にいたい”なんて矛盾したこと思っちゃう。
『そんな顔すんなよ。行きづらくなるだろ…。』
そう言うとカズさんは私のことをギュッと正面から抱き締めた。
『できるとき、ちゃんと連絡するから。いい子でいんだぞ。』
そう言って優しいキスをすると、振り返らずそのまま玄関を出て行った。
昨日までリングが置いてあった場所に、代わりにゲームのソフトを残して…