精神を研ぎ澄ませ。ここで集中力が切れたら負けだ。
周辺の空気が張り詰めていく。向こうとはそれほど離れていない。普段よりも剣は重く感じる。それは同じ条件だが、圧倒的にこちらは不利である。下手をすれば、すぐに勝敗は決まってしまうだろう。今はどちらが先に出るか、ただただ探りあいをしている。
一瞬、体が僅かに動いたかと思ったら、あっという間に距離を縮められ、下から右腕が振り上がってくる。体で受け止めてしまわぬよう、後ろに重心を移しながら、剣先で流すように軽く受け止めた。剣先どうしが短くこすれる音が響く。これで勢いを受けることなく、振り上げた先へと送り流すことができる。だが攻撃に移ることは出来ない。
続けざまに第二打が来た。今度は左腕が真横から振られる。さすがにうまく流せず、勢いに負けて剣が左へと傾いた。視線を正面に移すと、右腕がすでにスタンバイしている。これはまずい。
目には見えないくらいの速さで逆手持ちされた剣が元の位置に戻り、それと同時に、待ってましたとばかりに右の剣が横から向かってくる。狙いは首元のようだ。
俺はすばやく後ろへと飛びのいた。間一髪逃れられた。受け止めなかったこともあって、勢いは殺されずに、そのまま大きく空を切る。同時に姿勢が少し乱れた。
チャンスだ!
着地と同時に、膝にバネをためていたので、一気に駆け出した。背中側ががら空きだ。ここに一撃を入れれば勝てる―そう思った。
だが狙ったはずの体は、ヒラリ、と俺の剣先を避けた。その直後、背中に木の棒を思いっきり叩き込まれた。姿勢が元に戻ってしまったようだ。真後ろからうけた衝撃で体のバランスが総崩れし、ダイブするように真正面から転んだ。これではもう受身に入るしかない。俺は右に視線を移し、再び剣を手に取ろうとした。
だが相手のほうが早かった。木でできた模造の剣の先端が、首元に突きつけられている。視線を後ろにまわすと、クミさんが俺をまたいで、見下ろしていた。
当然だけど、また負けた。
鳥「背中大丈夫?」
「鞘があったので、ギリギリセーフでした。でもちょっと痛いです」
鳥「無理しないでよw。それにしても、よく耐えられるよね」
「訓練なのでしかたないです。まあ、あの時に比べたらまだマシですよ」
鳥「あの時はある意味修羅場だったwww」
思い出しながら俺も苦笑した。背中がまだ痛む。
ここに来てから、もう三ヶ月が過ぎた。雰囲気にも慣れて、毎日がとても楽しい。結局タメ口はできなかったけどね。
今は鳥さんと一緒に狩りをしている。ネザーでやらかした分、なにか出来ないかと思い、結構大変な仕事である「狩り」を受け持つことにしたのだ。元々それを担当していたのは鳥さんで、実際は受け持つというよりは、むしろ共同作業だった。大変ではあるけれど、やりがいもあるし、鳥さんとも仲良くなった。そのおかげでずっと続けている。
今朝はクミさんに連れられて稽古をしていた。一対一で対峙して、戦闘形式で行うものだ。当たり前のことだけど、いつもクミさんにコテンパンにやられる。時々ここはどうするか等々、改善点やアドバイスをくれることもある。
実感はないけれど、多分腕は少しずつ上達しているのだろう。まぁ、俺が勝つなんて事は、真夏に雪が降るのと同じくらい、ありえないことだけどね。
ちなみに、先ほどの「あの時」というのは、クミさんの攻めが圧倒的過ぎて、俺が気絶したことだ。何があったのか、その時のクミさんはいつも以上に殺気立っていた。やるべきか躊躇するほどだったけど、引いても何が起きるか分からないので、結局いつもどおり対峙したのだ。
その後俺は気を失った。後で聞いた話によると、クミさんが俺を担いで運んでくれたそうだ。幸いソーラさんとアイクさんの手当てのおかげもあって、一時間後に目が覚めた。体に異常は感じなかったけれど、大事をとって3日間安静にすることになった。クミさんも、ともさんからこってり絞られたそうだ。それだけ怒るのも、よっぽどのことだったらしい。
俺が安静にしている間、クミさんは部屋に来て色々と手助けをしてくれた。だけどその姿は、いつも見ている落ち着いた姿ではなく、どこか混沌とした感じだった。反省しているのはわかったけれど、見ていて痛々しかった。クミさんもその時、痣と傷だらけの俺を見て、ショックを受けてしまい、一時期自己嫌悪にまでなったそうだ。
あの時ほど、散々だったことはない。
周辺の空気が張り詰めていく。向こうとはそれほど離れていない。普段よりも剣は重く感じる。それは同じ条件だが、圧倒的にこちらは不利である。下手をすれば、すぐに勝敗は決まってしまうだろう。今はどちらが先に出るか、ただただ探りあいをしている。
一瞬、体が僅かに動いたかと思ったら、あっという間に距離を縮められ、下から右腕が振り上がってくる。体で受け止めてしまわぬよう、後ろに重心を移しながら、剣先で流すように軽く受け止めた。剣先どうしが短くこすれる音が響く。これで勢いを受けることなく、振り上げた先へと送り流すことができる。だが攻撃に移ることは出来ない。
続けざまに第二打が来た。今度は左腕が真横から振られる。さすがにうまく流せず、勢いに負けて剣が左へと傾いた。視線を正面に移すと、右腕がすでにスタンバイしている。これはまずい。
目には見えないくらいの速さで逆手持ちされた剣が元の位置に戻り、それと同時に、待ってましたとばかりに右の剣が横から向かってくる。狙いは首元のようだ。
俺はすばやく後ろへと飛びのいた。間一髪逃れられた。受け止めなかったこともあって、勢いは殺されずに、そのまま大きく空を切る。同時に姿勢が少し乱れた。
チャンスだ!
着地と同時に、膝にバネをためていたので、一気に駆け出した。背中側ががら空きだ。ここに一撃を入れれば勝てる―そう思った。
だが狙ったはずの体は、ヒラリ、と俺の剣先を避けた。その直後、背中に木の棒を思いっきり叩き込まれた。姿勢が元に戻ってしまったようだ。真後ろからうけた衝撃で体のバランスが総崩れし、ダイブするように真正面から転んだ。これではもう受身に入るしかない。俺は右に視線を移し、再び剣を手に取ろうとした。
だが相手のほうが早かった。木でできた模造の剣の先端が、首元に突きつけられている。視線を後ろにまわすと、クミさんが俺をまたいで、見下ろしていた。
当然だけど、また負けた。
鳥「背中大丈夫?」
「鞘があったので、ギリギリセーフでした。でもちょっと痛いです」
鳥「無理しないでよw。それにしても、よく耐えられるよね」
「訓練なのでしかたないです。まあ、あの時に比べたらまだマシですよ」
鳥「あの時はある意味修羅場だったwww」
思い出しながら俺も苦笑した。背中がまだ痛む。
ここに来てから、もう三ヶ月が過ぎた。雰囲気にも慣れて、毎日がとても楽しい。結局タメ口はできなかったけどね。
今は鳥さんと一緒に狩りをしている。ネザーでやらかした分、なにか出来ないかと思い、結構大変な仕事である「狩り」を受け持つことにしたのだ。元々それを担当していたのは鳥さんで、実際は受け持つというよりは、むしろ共同作業だった。大変ではあるけれど、やりがいもあるし、鳥さんとも仲良くなった。そのおかげでずっと続けている。
今朝はクミさんに連れられて稽古をしていた。一対一で対峙して、戦闘形式で行うものだ。当たり前のことだけど、いつもクミさんにコテンパンにやられる。時々ここはどうするか等々、改善点やアドバイスをくれることもある。
実感はないけれど、多分腕は少しずつ上達しているのだろう。まぁ、俺が勝つなんて事は、真夏に雪が降るのと同じくらい、ありえないことだけどね。
ちなみに、先ほどの「あの時」というのは、クミさんの攻めが圧倒的過ぎて、俺が気絶したことだ。何があったのか、その時のクミさんはいつも以上に殺気立っていた。やるべきか躊躇するほどだったけど、引いても何が起きるか分からないので、結局いつもどおり対峙したのだ。
その後俺は気を失った。後で聞いた話によると、クミさんが俺を担いで運んでくれたそうだ。幸いソーラさんとアイクさんの手当てのおかげもあって、一時間後に目が覚めた。体に異常は感じなかったけれど、大事をとって3日間安静にすることになった。クミさんも、ともさんからこってり絞られたそうだ。それだけ怒るのも、よっぽどのことだったらしい。
俺が安静にしている間、クミさんは部屋に来て色々と手助けをしてくれた。だけどその姿は、いつも見ている落ち着いた姿ではなく、どこか混沌とした感じだった。反省しているのはわかったけれど、見ていて痛々しかった。クミさんもその時、痣と傷だらけの俺を見て、ショックを受けてしまい、一時期自己嫌悪にまでなったそうだ。
あの時ほど、散々だったことはない。