昼過ぎまで獲物を追い、ある程度の成果を出したので、拠点に戻ることにした。牧場も一応はあるのだが、個体数を減らさないためにも、こうやって外で狩りをすることは必要なのだ。
鳥さんと二人で談笑しながら帰宅していたが、ふと、気になっていたことを思い出した。
「一つ聞いていいですか」
鳥「なに?」
「最近、ソーラさんの様子がちょっと変だと思うんですが、何か知りませんか」
鳥「変って、どんなふうに」
「何というか…、やけにソワソワしているように見えて」
これはつい最近感じた。ソーラさんは普段、料理を担当している。俺は作業が早く終わったり、暇だったときには、よく料理の手伝いをしているのだ。もう習慣みたいになっていて、ソーラさんもある程度了承していた。だがある時から、手伝いに行くと妙に落ち着かないような素振りになっていた。
鳥「ソワソワしているようには見えないけど」
「そうですか?」
鳥「俺もちょくちょく話すけど、普段とぜんぜん変わらないよ。考えすぎなんじゃないの」
「それならいいんですけど、心配で」
鳥「それなら、あちゃみさんに相談したらどう?毎日のように女子会しているから、何かわかるかもよ」
「そうしてみます。すみません、変なこと聞いて」
鳥「これくらいいいよw」
わずかに期待したけど、やっぱり避けられないようだった。
家に戻ると、だいぶ時間が空いていた。ちょうど夕方になりかかっていたので、ソーラさんの手伝いに行った。
やはり、地に足がついていないような落ち着かなさを感じた。話し方もどことなくぎこちない。本人に直接問いただしたほうが、モヤモヤも晴れるだろうが、もし何か思い悩んでいたら、かえって傷つけてしまうかもしれない。結局何も出来なかった。ただ近づきがたい壁のようなものが残ってしまった。
後片付けを終え、あちゃみさんの部屋へと向かった。俺にとっては頼れる姉貴分のような存在で、今までもよく相談に乗ってもらった。(俺が悩んでばっかりなわけじゃないからね)なにか知っていればいいのだけど。
突然の来訪にも驚くことなく、あちゃみさんは中へ入れてくれた。部屋は明るい装飾品でデザインされていて、まるでカーニバルの中にいるようだ。
俺は鳥さんに話したことを、そのままに伝えた。
あ「そうだなぁ、あたしも特にはそんな変だと思わないけど」
「やっぱり俺の考えすぎでしょうか」
あ「ウーン…、あ、もしかして」
「な、なんですか!?」
あ「数日前の採掘が原因じゃない?ほら、たしかムサシ君、ソーラさんを―」
「それ以上言わないでください!」
体の奥深くから、熱い何かが顔めがけて一気に上昇し、覆っていくのがわかった。頬が火照り始めた。
あ「顔赤くなってるw。もうみんな知ってるよ。ソーラさんを抱きしめたこと」
「だって…しょうがなかったんです」
あ「大丈夫、それも知ってるからww。」
全然大丈夫じゃないですけど…
その事件-正確に言ったら事故だが―は、数日前、採掘に行ったときに起きた。
当時のメンバーはソーラさん、わとさん、ともさん、そして俺だった。石炭と鉄鉱石の備蓄数が少なくなっていたそうで、急遽洞窟へと向かうことになった。幸い両方ともそれなりの量を採取できて、順調に事は進んでいた。
だが帰ろうとした時、天井の一部が小さな崩落を起こしたのだ。崩れ始めた時、男子3人はすぐに気がついたが、ソーラさんは一番先頭を歩いていて、不運にも崩れた天井の真下だったから、気がついていなかった。とっさに俺は駆け出した。
背中から抱きしめるような格好(結果的に抱きしめてしまったケド)で、俺は体を傘のようにしてソーラさんを守ろうとしたのだ。だけど崩落は少し大きい石がコロコロ転がった程度で、怪我するほどではなかった。ただ、恥ずかしかった。
謝罪の言葉を思いつく限り言いまくった。被害者であるソーラさんは、顔がものすごく赤くなっていたけど、許してはくれた。
だからもう済んだことだと思っているが、やっぱり原因なのではないかと思う節もある。昼頃に鳥さんに話を振ったのは、他の可能性にすがるためだった。だけど鳥さんだって知っていたはずなのに、指摘しなかった。たぶん気を使ってくれたのだろう。
「でもあの時、許してもらったんです。もしそうなら、許していないってことじゃ…」
あ「悪気がないのはわかっていると思うよ。だけどソーラさんの中で、まだうまく処理できてないんじゃないかな」
「そういうものでしょうか」
あ「私視点だけどね。それにムサシ君みたいに、割り切れる人もいれば、そうでない人もいるでしょ。人それぞれだよ」
「たしかに」
あ「今までどおり、普通に接していれば、きっともどるよ」
わずかな希望にすがるように、俺はそうなってほしいと願った。