「ムサシ君のことが…ずっと、好きだったから」
「…はい?」
予想もできなかった発言だった。だが次の瞬間、普通の人間ならば絶対にありえないことを、俺は呟いた。
ソ「ずっと、ずっと前から好きだった。だから―」
「ウソだ」
ソ「え…」
こんなことを言われても、ウソとしか思えなかった。この状況で本当だと思えるほどの感情の余地はなかった。俺は続けた。
「でしゃばって戦っても、大して強くもないから逆の結果になるし、身の程を知らないで迷惑ばっかりかける。おまけに無自覚に人の大切なものさえも破壊しようとする。こんなヤツの何がいいんですか。どこにそんな要素がありますか。
むしろ、いないほうがいい人間です。「部外者」―、そういわれても、仕方ないじゃ―」
ソ「ちがう」
即答だった。直後、ソーラさんは体を近づけて、俺の上着を力強くつかんだ。そして至近距離から見つめてきた。さっきまでは対峙できたのに、今は視線をそらしてしまう。なぜだ。
ソ「あなたは…そんな人じゃない」
「どうしてそんなことが言え―」
ソ「見てきたからわかる」
いつのまにか、怒りや悲痛はどこかへ消えた。何百年も融けなかった巨大な氷壁から、水が流れ出るような感覚が、わずかに感じられる。
ソ「それに、私を何度も助けてくれた。ムサシ君が、もしさっき言ったような人なら、あの時は逆の結果だったの?」
「それは…」
今度は俺が言葉に詰まった。気付いたら目の奥で何かがうごめいている。
ソ「絶対にちがう。最初に出会ったとき、自分の身を危険にさらして、私やクミさん、アイクさん、showさんを助けた。それだけじゃない。ネザーでも必死に戦っていた。
ムサシ君は、みんなを助けたの。あなたがいなかったら、絶対に誰かが傷ついていたし、悲しんでいた。だから―」
すでに目から何かがあふれ出ていた。止められない。
「ちがう…俺は…」
それ以上言葉は続けられなかった。また俺は泣いた。でもさっきのとはちがう。自分に張り付いたけがれたモノを、涙が洗い流してくれるかのようだった。
肩の辺りに手がまわった。ソーラさんが優しく抱きしめていた。
半分泣きながら、拠点に戻った。その間、ソーラさんは右手を俺の背中に当て、左手で手を握りながら、ゆっくりと連れてきてくれた。
入り口ではともさん達が待っていた。showさんは先ほどとはうって変わって、しょぼくれている。その後ろではクミさんが、ものすごい形相で立っていた。大体想像はつく。
手前まで来ても、完全には落ち着かなかった。ヒクヒクと、しゃっくりのようなものが止まらなかった。
安堵した笑顔で、ともさんは言った。
と「無事でよかった」
「…すみません、俺…」
と「なにも言わなくていい」
それから周りに視線を移した。
と「さて、無事ムサシ君も戻ってきたことだし、とりあえず一件落着だけど…。
この雰囲気、なんとかしないとなぁ」
鳥「ここは、アレ、でしょう」
あ「アレしかないよね」
と「やっぱり?バステンさん、大丈夫そう?」
バ「いつでもOKですよ」
と「それじゃ、決まりだね」