夢 三木光義(香川県三豊郡和田中学3年)


おれは、谷の中を歩いた。
うす暗い谷の中には、
野ばらや、かずらや、もろだのような、
おれの歩みをさまたげるものはなかった。
だまっている谷の夜明けだった。
ごつごつした岩の中に、
青く澄みきった水たまりがあった。
そいつは、
青いガラスでのぞいたようだった。
小さい魚たちの、
のんびりした世界だった。
水に半分つっこんだシダの顔は、
生き生きした萌黄(もえぎ)色だった。
シダのかげで、大きい魚が
新しい空気をぱくぱく吸っていた。
小さなコケにも、
白い花が咲いていた。
水たまは、
うれしそうに笑いながら、
コケの間から、きらきら光っていた。
どこまでいっても、
小さいものたちの
楽しい、楽しい、世界だった。
それは、
おれたちの部落の
お正月の朝のように。

 (巽聖歌編「中学生詩集」より 中学三年生の詩)




<夢>は、ただ、ほんとうに見た夢を、書きならべただけでありましょうか。私はこれを、考えた夢だと思っています。ほんとうに見た夢だとしても、芸術のために考えられた「考え」の重さが加わった夢だと思います。

そこには、天然色映画のように美しい谷間があります。野ばらや、かずらや、もろだや、水たまりや、魚や、萌黄色のシダや、いろいろなものがありましょう。それは、現実の苦悩や重圧をのがれようとする作者の「夢」だったのではないでしょうか。「それは、俺たちの部落のお正月の朝」のようだったのです。  (巽聖歌)