予感  石原吉郎

まこと この眼窩のなかには
秋が
抗議のない季節が
しかと住んでおり
僕はしばらくもそれから
眼をはなすことはできない
この眼窩の背後の
あらわな頭蓋の空洞を
はるかにこえて
羊群と行きかう雲の
声もない風景と季節の
めぐりかわりはあるが
しかし ここにえぐられて
しかとある季節には
永遠に変りはない
やがて 僕は
眼をそらすであろう
そのとき ぼくの眼のなかへ
まっさきに何がなだれて来るか
凝視することのゆえに
ますます孤独な
その視界のなかへ
 
 ( 初期未刊詩篇から )