ボクの反射 竹中郁

鏡の中へ私は這入つてゆけない。
私は断わられる。
鏡の中の私のカラア、私のネクタイ、私のカフス扣鈕(ボタン)などが散らばつている。
くづれ落ちた私を拾ひ集めようとして、手を差し伸べる。
私の手をつかまへて、私でない私が、
「おまへとともに居たくはない。
おまへはその儘(まま)でいるがいいんだ。」
と命令するやうに叫ぶ。
私は崩折れる。白い灰のやうに。
光を前にして。

 (詩集「象牙海岸」より)