爬虫類   北川冬彦

爬虫類は、毀(こは)れた乳母車に豆と石鹸とタオルを 載せて、街の風呂屋から這(は)つてかへつて来た。         

 (詩集「検温器と花」より)





 星  荒川洋治

兵舎のあとである
まだコンクリートの土台石が残っている
バラックだったとは思えない

コンクリートは粗雑で
豆もちのように
礫を入れている
時計のおもりをはずし
父をはしらに一家四人
涼みがてら
それを窓から見ている
コンクリートから
小石が
流れでているのもある

ああ
まだ流れているね
私一人
遅れてこの家屋に
現れた。
もとの形を知らない
知ったひとびとに
それは星ではなかろう
くいいじのはった
祖母も
はしをとめて
みている

 (詩集「針原」より)