
片瀬海岸 北川冬彦
このしみったれた浜はどうだ、
紙屑があちらにもこちらにも
ゴワゴワころがっている
まるで夜更けの銀座のようだ
折れっ杭があっちこっちにあって
うっかりしていると足をさらわれてしまう
空には星もあり
沖には燈台も光っているのだが
薄ぼけてなっちゃいない
夏のこの浜ったら
豪勢ないのちの濫費場だったのに!
旅館は灯をおとしている
暗やみの中に
波だけがザザザザと寄せては返している
白い波頭が一つ現れると
たちまち隣りに一つ、
またその隣りに、
それらが手をつないだと見る間に
一線となって岸めがけて押し寄せる、
その一線が消えない間に
また一線、
また一線、
波は洗えど洗えど
浜は
潔められそうにもない。
このしみったれた浜、
しみったれた浜。
(詩集「夜陰」より)

