奉天の館 室生犀星

ひとり洋館(ほてる)にこもり
わが行末を思ひ見ぬ
虎のごとく書いて死なんか
陋居(ろうきょ)に餓(う)ゑて死にはてんか
死(くた)ばらんか、
死ばらんか、
この日降砂は天を蔽(おほ)ひ
濁れる雲は乱れたり
我、杖を市街に曳(ひ)き
降砂のなかに立ち出でぬ。

 (「哈爾濱詩集」より)