グレーの猫 高橋順子

ぬいぐるみのグレーの猫がウチに来た
頸(くび)にグレーのマフラーをして
お腹のところにバラの花の刺繍が刺してある
きゅっと目をつむって口をとじている
白い壁に凭(もた)せかけると
なにかの影法師みたいに見える
おしゃれな影法師ね
遠くから来たにちがいない
「壁は あんたの霧よ」
霧をしたがえる手つきになる
「わたしはわたしの影法師
もっと濃くなってみせるわ」
ぬいぐるみがそう言うと
霧が真っ白になった

 (詩集「幸福な葉っぱ」より)